アドルの依頼

ある日。

お店にアドルさんが1人でやって来た。


「どうしたんですか?

珍しいですね。」


バニングさんをリーダーとするコーラル商会の護衛チームの1人。弓使いのベテランだ。


アドル

「すまない。

少し頼みたいことがある。

話だけでも聞いてもらえるか?」


「いいですよ。」


アドルさんって地味なんだよな~。

バニングさんはリーダーだし、

ロックさんは世話焼きでおしゃべり、

ミレイさんは女性だからマヘリアさんとセットのパターンが多い。


「アドルさん、どうしたんですか?」


アドル

「実は昔一緒にパーティーを組んでいた男が大怪我をしたらしくてな。

回復薬を届けたいんだ。」


「その人はどこにいるんですか?」


アドル

「ドバン帝国のハイトン近郊の農村だ。」


ハイトンと言うのは僕がいつも奴隷を買うアルバンから少し内陸に行った街だ。

行ったことないけど。


「なんなら僕が回復しようか?」


アドル

「いや、回復薬を使うことに意味があるんだ。」


「どういうことですか?」


アドル

「あいつとは昔一緒にパーティーを組んでいたんだが、Dランクの時に引退したんだ。

その時に装備は売り払ってしまったが、道具は俺にくれたんだ。

そして万が一、あいつが大怪我をした時は返すと約束していたんでな。」


なるほどね。

引退しちゃったその人とランクアップをしたアドルさん。もしもの時は助けに駆けつけるってことなんだろうね。


「それで僕に依頼ですか?」


アドル

「個人的な話だからな。

あまり長期間仕事に穴を空けたくないんだ。

行きだけでも速く運んでもらいたい。」


「いいですよ。

ハイトン近郊ですよね。

そこまで遠くないし。」


アドル

「ありがとう。

後で依頼料は支払う。

そこまで高額は出せないが、、、

Aランク冒険者の日当程度は出すよ。」


行きを僕が運んで、帰りは自力で帰るつもりなんだろうね。歩いたり、乗合い馬車だとかなり時間がかかるだろうね。


「夜出発でいい?」


アドル

「問題ない。」


僕のスピードで飛べば、朝には到着していると思う。


「アドルさんはその後、どうするの?」


アドル

「帰るだけだが。」


「そっか~、、、

それなら、帰りはうちのドラに送らせようか?」


アドル

「そりゃ、助かるが。

いいのか?」


「いいですよ。

ドラに運んでもらえば早く戻って来られると思いますよ。

僕はせっかくドバン帝国方面に行くなら、ダンジョンまで足を伸ばそうかな~、と思って。」


アドル

「ついででダンジョンに行くのはお前ぐらいだぞ。」


「一度行っとくと、いつでも行けるようになるからね。時間がある時にダンジョンに行くようにしてるんだ。」



と言うことで出発。

アドルさんとガウとドラ。

夜出発して寝ている間にハイトンに到着。


アドル

「寝ている間にドラゴンに運んでもらうなんて体験は、誰に話しても信じてもらえんだろうな。」


「僕のまわりだとよくあることだよ。」


アドル

「さてと、あそこが目的地だ。」


普通の農家だ。

アドルさんがドアを叩く。


アドル

「ブレンいるか。」


ドアを開いて出てきたのは女性だ。


女性

「どちら様ですか?」


アドル

「アドルが来たと伝えてくれ。」


女性

「アドルさん!?

本当に来てくださったんですか。」


アドル

「約束だからな。」


家に招き入れてくれた。

家の中には3人の子どもとベッドで横になるおじさん。


おじさん

「アドル、本当に来てくれたんだな。」


アドル

「約束を果たす前に死なれたら困るからな。

まずはこれを飲め。」


アドルさんがポーションを手渡す。

おじさんがポーションを飲み干す。

おじさんの体が光に包まれる。


おじさんの体から光が消える。


おじさん

「ありがとう。

かなり楽になったよ。

俺が昔やったポーションよりも格段に良いポーションだな。」


アドル

「昔俺たちが使ってたのは安物だからな。

今は俺も稼ぎが良いからな。」


おじさんの表情がかなり落ち着いて、血色も良くなっている。

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