職人魂

「じゃあ、オリハルコン製のは僕が預かっときましょうか?

そしたら安全でしょ。」


ヒメレス

「仕事はどうしましょう?」


「僕からの依頼の木を加工する時だけうちに来てやってくれたらいいんじゃない?」


ヒメレス

「それなら、なんとか可能かと。」


イリーナ

「道具が立派過ぎてここまで制約がつくなんて。。。」


メリル

「申し訳ございません。少し調子に乗り過ぎました。」


ガンズ

「どうにも職人として止められなくてな。」


ガンズさんとメリルさんが反省している。


「じゃあさ、今度、自制心ゼロで好きにこだわりの武器作ってみる?

原材料は全部僕が用意するし、完成した武器は責任を持って僕が保管するよ。」


ガンズ

「本当か!?」


「こんな時に嘘はつかないですよ。

僕も世に出せない素材が溜まってるから、有効に使えるなら大助かりだよ。」


メリル

「特殊効果も自由に選んでいいんですよね。」


「もちろん。

ダンジョンで集めた素材が溜まってるから、使い放題だよ。」


ガンズ

「すまんな。

よし!

明日、やるぞ。

準備を整えるぞ。」


メリル

「使う素材をチェックさせてもらってもよろしいですか?」


「いいですよ。

いくつか素材を置いていきますね。

好きに選んでください。」


僕は大量の素材を置いて、宿屋に引き上げた。本当は日帰りのつもりだったけど、イリーナさんとヒメレスさんと一緒に1泊することになった。




そして翌日。

ガンズ工房の一番大きな作業場で行うことになった。いつもはガンズさん個人の部屋で行っているが、弟子たちが見学を希望したため、広いスペースで鍛冶を行うことになった。


ガンズ

「始めるぞ。」


ガンズさんはエンペラードラゴンの牙を取り出す。ダンジョンにいた偉そうな名前のドラゴンだ。


その牙を魔法陣の書かれた紙に乗せる。

そしてガンズさんが力を注ぎ込む。

弟子たちが固唾を飲んで見守る。


魔法陣が輝き、その光が牙を包み込む。

光が収まった時、牙は金属の塊のように変質していた。

これが錬成術らしい。

魔物の素材を加工する時に使う技術で、錬成術を行うことで、その後の加工がやりやすくなるらしい。


次はメリルさんだ。

メリルさんも魔法陣の書かれた紙を用意している。メリルさんは魔物の素材から魔法紙に特殊効果を写し取るスペシャリストなのだ。


ダークヒドラの皮

エレメンタルクイーンの結晶

ソードドラゴンの爪


順番に魔法紙に特殊効果を移していく。

静けさが部屋を支配している。

特殊効果を抜き取った素材は色を失っていく。


メリル

「魔法紙の準備が出来ました。

これから特殊効果を入れていきます。」


メリルさんは魔法紙を敷く。

その上に先ほどガンズさんが作ったエンペラードラゴンの牙を置く。

そして、魔法紙が輝き出す。

その光が牙に吸い込まれていく。


メリルさんが集中している。

そのメリルさんの一挙一動を見逃すまいと弟子たちも見つめている。


やがて光が収まり、魔法紙が粉々に砕けていく。


メリルさんがようやくニッコリと微笑む。


メリル

「成功です。

後はお任せ致します。」


ガンズ

「任せておけ。」


ガンズさんが牙を炉に入れる。


ガンズ

「ミトン、相槌の準備をしておけ。」


ミトン

「はい。」


ミトンさんも真剣だ。


「羨ましい、、、」

「俺も相槌したかったな、、、」

周囲の弟子から羨望の声が漏れる。


炉の中の牙をじっと見つめるガンズさん。

沈黙が続く。


そして、、、


ガンズさんが牙を炉から取り出す。


うん、僕の目には違いはわからないけど、タイミングがあるんだろうね。


カーン!


ガンズさんの金槌の音が響く。


カーン!


ミトンさんも続く。


カーン!

カーン!

カーン!


職人さんが集中する姿って格好いいよね。

絶対的な集中。

無駄の無い所作。

魂を燃やし、全てを注ぎ込む。


ガンズさんとミトンさん。

周囲に誰もいないみたいに2人の世界に入り込んでる。


やがて、2人の金槌が止まる。

そして、

ガンズさんが刀身を水に入れる。

爆発的な湯気と強烈な光が辺りを包み込む。

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