ヒメレスさんと受け取りに行こう

ガンズさんとの約束の日が来ました。

今日はイリーナさんも一緒です。


どうやらヒメレスさんは帰った後にイリーナさんに叱られたらしい。

一言で言えば、やり過ぎだ、とのこと。

まさかオリハルコンでのみや彫刻刀を作るとは思ってなかったらしい。


僕、ヒメレスさんとイリーナさんの3人で朝から空の旅です。


「もうすぐ到着ですよ~。」


特に問題もなくベルン王国のフルトに到着。

僕らはガンズ工房を訪れた。


「いらっしゃい。」


声をかけてきたのはこの前の若い男性店員さんだ。たぶん職人なんだろうけど。


「すいません、ガンズさんと約束で。」


店員

「大丈夫ですよ。

今日はちゃんと親方から聞いていますから。

ちょっと待ってくださいね。

ミトン~!」


店員さんが奥に向かって大きな声でミトンさんを呼んだ。


「は~い!」

遠くから大きな返事。


少ししてミトンさんが出てきた。


ミトン

「あっ! アキラさん。

すいません、お待たせして。

こちらへどうぞ。」


前回同様、ガンズさんの部屋に案内してくれる。途中でメリルさんの部屋でミトンさんが僕たちが来たことを伝えてくれた。


僕たちがガンズさんの部屋に入ると、追いかけてメリルさんも入って来た。


ガンズ

「ちゃんと完成したぞ。

問題は無いと思うが、持って確認してくれ。」


ガンズさんが工具を出してきた。

のみとか彫刻刀とか。

正式名はよく知らないけど木工用の工具一式だ。

見た目は普通。

今までヒメレスさんが使っていた道具と変わらない。


ガンズ

「刃はオリハルコン、持ち手の部分の木材はアキラが持ってきた木を使っている。」


ヒメレスさんは1本1本、丁寧に確認していく。


ヒメレス

「少し試してもよろしいですか?」


ガンズ

「もちろんだ。

非常によく切れるから、今まで通りの使い方をするとケガをする可能性があるから、慎重にな。」


ガンズさんが木材の端材を用意する。

ヒメレスさんが彫刻刀を当てると、吸い込まれるように刃が入っていく。

次々に試していくヒメレスさん。


ヒメレス

「素晴らしいデキです。

刃の鋭さ、頑丈さはもちろん、手の馴染みも非常に良い。

こんなに素晴らしいものに出会ったのは初めてです。」


感動し、興奮気味に話すヒメレスさん。

その隣で彫刻刀を鑑定メガネで鑑定するイリーナさん。


イリーナ

「特殊効果が3つも!?」


メリル

「自動修復、器用さ上昇、力上昇です。

木工作業を行うなら、あまり癖のある効果をつけるのは逆効果でしょう。」


フラフラと倒れそうになるイリーナさん。

慌てて支えるヒメレスさん。


イリーナ

「なんて物を作っているんですか、、、

これがもし、剣だったら、

戦争で奪い合いになってもおかしくない代物ですよ。」


「そうなの?」


メリル

「ええ、、、まぁ。」


歯切れの悪いメリルさん。


ガンズ

「すまんな。

貴重な素材が潤沢に用意されて、職人魂に火がついてしまったんだ。

出来上がった後に、冷静になって、我々もどうしようか頭を抱えてしまったんだ。」


「そんな~、オーバー過ぎません?」


イリーナ

「全然オーバーじゃありません。

こんな道具を持っていたら、安心して眠れません。」


「う~ん。」


ガンズ

「そう言うだろうと思って、普通の道具も作っておいた。」


ガンズさんがもう1セット出してきた。

普通の鉄で作っているらしい。


ヒメレス

「失礼します。」


ヒメレスさんが工具を手に取って真剣に見つめ、試していく。


ヒメレス

「こちらも素晴らしい道具です。

さっきのオリハルコンのせいで感覚がおかしくなっていますけど、この彫刻刀もとても使いやすいです。」


イリーナ

「素材は普通でも、ガンズさんが作った時点で普通じゃないわ。」


「その彫刻刀で僕の持ち込んだ木材の加工って出来るんですか?」


ガンズ

「残念ながら無理だな。

どれだけ鋭くしても鉄では無理だ。」


どうしよう。

結局杵と臼が作れないじゃん。

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