新米冒険者支援

タチアナ

「検討が必要でしょう。

返却率、その時の装備の消耗具合、価格設定と利用率など、考えることは沢山あります。」


オリバー

「それに初心者向けの防具も用意する必要がある。どうしても新米冒険者は武器に金を使う傾向があるからな。初心者向けの防具はあまり需要がない。

冒険者になって、危険な目にあって、ようやく防具の重要性に気付く連中が多いからな。」


ロイズ

「おっしゃる通りです。

危険な目にあう前に備えるのが本来の冒険者の姿なのですが、現実は、、、

そういった者は少数派でしょう。

商人ギルドで用意は可能でしょうか?」


オリバー

「そうだな、、、

時間さえもらえれば十分可能だ。

まだまだ未熟な職人に仕事を振ってもいい。

新米冒険者向けの防具なら問題なく作ったり、整備したり出来るだろう。」


タチアナ

「有難うございます。

では、父上に上申してみます。」


ザバス

「タチアナ様。

ここで合意した内容を書面にまとめ、署名をお願いするのがよろしいかと。」


タチアナ

「ありがとう、ザバス。

皆さん、少しだけお待ち頂けますか?」


ここでノーと言うような人はなかなかいないと思う。タチアナ様が書面を書き上げ、全員が署名をしていく。


オリバー

「さすがはザバス様。強かですな。」


ザバスさんは軽く頭を下げて聞き流す。


後でガロッソさんから聞いたんだけど、

この書面で冒険者ギルドのギルドマスター、商人ギルドのギルドマスターが既に強い協力体制にあることを示しているらしい。

2人のギルドマスターは影響力が大きく、下手な貴族よりも無視出来ない存在らしい。

その2人がタチアナ様の後ろ楯についていることを明示されれば、パエルモ伯爵としても、ただの父娘の会話で済まないらしい。




タチアナ様はみんなにお礼を言って帰っていった。


ガロッソ

「ふ~、疲れたな。

孤児院の揚げ物屋運営はおそらく実施に進むだろうな。」


オリバー

「防具のレンタルが少しでも商売になればいいがな。」


ロイズ

「パエルモ伯爵の御判断を期待しましょう。」


そんなことを言いながら3人も帰っていった。




後日談になるけど、

揚げ物屋運営はパエルモ伯爵の承認が出た。

と言うか、飲食店を開くだけだからね。

少しの支援金を用意するだけで、今後の孤児院の負担が減るなら、やらない理由がない。

タチアナ様曰く、僕への信頼が大きいらしい。本当か社交辞令かはわからないけど、言われて悪い気はしないよね。


どちらかと言うと孤児院の方が難色を示した。それでもタチアナ様が熱意を持って説得し、孤児院も賛成してくれた。

この冬に準備を整えて、春から屋台をスタートする予定だ。参加するのは希望者だけ。

まぁ、非戦闘職のある程度以上の子どもはみんな参加を希望したみたい。何人にやってもらうかは、これから検討だね。


冒険者支援については、まず王都の冒険者ギルドに許可を取ることからスタートとなった。なんと言っても王都のギルドが上位らしいからね。

そして防具のレンタルにはパエルモ伯爵も多少の協力はするらしい。これは商売として成立するし、街の防具職人の支援にもなると判断したらしい。


ただ、先輩冒険者による講習についてはパエルモ伯爵は関与しない方針らしい。

冒険者ギルドの自治として行う事項であり、領主が積極的に支援する必要は無いというのが見解だ。

おそらく、パエルモが治安がよく、冒険者の仕事が限られるため、上昇思考のある冒険者は早々に街を離れる。

そのため、順調に冒険者が育つと街を早く離れてしまう、という懸念があるということらしい。



まぁ、冒険者の問題は僕には関係無いからね。僕は孤児たちの揚げ物屋運営スタートに向けて動き出すだけだね。

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