揚げ物最強

「まぁまぁ美味しかったでしょ。

これを孤児が作って売ることで収入を得る。

下準備は孤児院で行って、最後の油で揚げるところだけ屋台でして、揚げたてを提供するんです。

そして孤児院を出た後もそのまま屋台で働けるし、孤児院には下準備の代金を渡すって感じです。」


イメージとしては孤児院をセントラルキッチンにして、仕上げだけ屋台で行う。

揚げたてはなんでも美味しいからね。


「メインはゴロイモだし、他の材料も安価だから始めやすいよ。ただ孤児院には初期資金が無いから、そこだけ支援して欲しいかな。

どうかな?」


ガロッソ

「悪くないな。マネされる前に定着させることが出来れば、屋台を増やしても客を獲得出来るだろう。」


オリバー

「そんなことを言って、

油なんかを独占納入して利益を上げるつもりだろ?」


ガロッソ

「コーラル商会は食品の取り扱いが得意だからな。多少の商売はさせてもらうぞ。」


タチアナ

「さすがアキラ様です。

これなら長期的に孤児院に収入が入りますし、孤児院を出た子どもの働き口も確保出来ます。」


「まぁ、全員が働けるほどではないですけどね。」


オリバー

「店を増やせば、ある程度解決出来るだろう。まぁ、慌てる必要は無いがな。」


ガロッソ

「だが、あまりに上手くいくようなら注意が必要だな。」


「どういうこと?」


ガロッソ

「自分も商売をやっていて、孤児の店、店員も子ども、そんな店に負けていたら、良からぬ事を仕掛けてくる可能性があるんだ。

子どもを危険には晒せないぞ。」


オリバー

「それなら『満腹亭』の名前を使えばいい。

『満腹亭』は既にブランドだ。

特にパエルモ伯爵との関係性の深さは有名だ。『満腹亭』の系列店という扱いにすれば、よほどのバカ以外は手を出さないだろう。」


「満腹亭の名前を出すなら、もう少し美味しくしたいんだけどな~。」


ガロッソ

「料理経験の無い子どもが作るってことと、屋台で販売するってことを忘れるなよ。」


「は~。仕方ないか。

店を出す前の調理の訓練は手伝いますよ。

それと、うちの系列店という扱いにするなら多少のマージンはもらいますよ。」


タチアナ

「当然でしょう。

双方に多少なりともメリットが無いと継続や拡大が難しくなります。」



僕の揚げ物屋運営は案としてまとまった。

今後はタチアナ様とパエルモ伯爵との打合せで実施の有無から決まっていくことになる。



ロイズ

「私からもよろしいですか。」


あまり出番がなかったロイズさんが口を開いた。


タチアナ

「もちろんです。」


ロイズ

「有難うございます。

タチアナ様も心配されていた孤児院を出た後のことです。

孤児院出身で冒険者になる人間は多数います。しかし、そのほとんどが続かないのが現実です。」


タチアナ

「どこに問題があるのでしょうか?」


ロイズ

「準備をしなさ過ぎるんです。

ろくな準備もなしに、とりあえず全財産で剣を買って森に入る。そして、モンスターに襲われ負傷。治療費が足らず、剣を売却してしまう。嘘みたいな話ですが、現実によくある話なんです。」


ガロッソ

「金を捨てているようなもんだな。」


ロイズ

「知識も装備も足りていません。

そこで解決策を2つ考えました。

1つは先輩冒険者による講習です。

引き受けてくれる冒険者に報酬を支払わなければなりません。その費用を冒険者ギルドと領主様とで折半をお願いしたいのです。

ギルドへの貢献度を高く評価すれば、格安でも受けてくれる冒険者はいると思います。」


タチアナ

「なるほど、、、。

もう1つの案は?」


ロイズ

「初心者用の防具の貸出しです。

費用は2ヶ月後の後払い。

買取やレンタルの継続も可能。

そうすれば、初期費用が用意出来ない冒険者も防具を利用しやすくなります。

2ヶ月あれば防具の重要性も理解するでしょうし、最低限の稼ぎもあるでしょう。」


オリバー

「紛失、破損、持ち逃げ。

そういうことも起きるぞ。」


ロイズ

「そうですね。

そういうことも起きると思います。

常に100%返ってくるとは考えていません。

ロス率を想定しながら費用を算出しようと考えています。」


タチアナ

「領主家は何をすればよろしいですか?」


ロイズ

「金銭的な支援です。

初心者支援と考えると、あまり高い価格設定は出来ません。事業を継続出来るような支援をお願い致します。」


ロイズさんが頭を深々と下げた。

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