タチアナ様と打合せ
タチアナ様との約束の日。
前回と同じぐらいの時間にタチアナ様とザバスさんがやって来た。
タチアナ
「アキラ様、
今日は宜しくお願い致します。」
僕
「こちらこそ、宜しくお願い致します。
こちらへどうぞ。」
タチアナ
「えっと、
こちらの方々は?」
タチアナ様を案内したテーブルには先客が3名。
僕
「冒険者ギルドのギルドマスターのロイズさん。商人ギルドのギルドマスターのオリバーさん。コーラル商会のガロッソさん。
相談するならもってこいな人たちでしょ。」
タチアナ
「私はパエルモ伯爵の娘のタチアナです。
今日はお集まり頂き有難うございます。」
ちなみにオリバーさんを連れてきたのはガロッソさんだ。僕は商人ギルドに登録してるんだけど、あんまり接点は無いんだよね。
何故かしら冒険者ギルドのロイズさんとの方が関係が深い。
タチアナ
「アキラ様、
ここまでの方々を集めて頂き有難うございます。」
僕
「いえいえ。
では、早速始めましょうか。」
タチアナ
「そうですね。
まずは私の案を聞いて頂けますか。」
みんなが頷く。
タチアナ
「私が考えたのは学舎の設立です。
負の連鎖を断ち切るのは知識と技術です。
孤児に学びの場を提供して、収入が確保出来る職業に就いてもらいます。
そうすれば街の発展にもつながりますし、元孤児からお金を集めれば孤児院の運営も助かります。
いかがでしょうか?」
しばらくの沈黙。。。
ガロッソ
「難しいだろうな。
孤児を優遇し過ぎです。
町人は子どもの教育に苦労しています。
それを孤児だけ支援となれば納得しないでしょう。」
タチアナ
「なら、街の子どもたち全員ならいかがでしょうか。5人教えるのも10人教えるのも手間はあまり変わらないでしょう。」
オリバー
「それは貴族の反発を生むでしょうな。
商人などの家庭教師をすることは、貴族の収入源になっています。それを奪うことになります。」
ガロッソ
「それに本当に困窮している家庭にとっては子どもも貴重な労働力です。5年後の収入よりも今日の食事です。おそらく子どもを学舎に行かせずに働かせることになるでしょう。」
タチアナ
「・・・なるほど。
私の思慮不足でした。」
オリバー
「発想は面白いと思います。
方々への根回しが出来れば、実現に近付くかと思いますが、そのままの案では実現は難しいですね。」
タチアナ
「有難うございます。
もう一度考えてみます。
アキラ様は何かございますか?」
僕
「一応僕も考えてみました。
まずはこれを食べてみてください。」
タチアナ様たちに料理を配る。
配ったのはコロッケとフライドポテト。
フライドポテトは普通の塩味じゃない。
のり塩とカレー味の2種類。
コロッケは普通のポテトコロッケ。
タチアナ
「美味しいお料理ですね。」
オリバー
「屋台でなら十分売れるだろうな。」
ガロッソ
「油で揚げているのか?」
僕
「さすがガロッソさん。
正解です。
でも一番のポイントは原材料なんです。」
タチアナ
「原材料?」
僕
「これ、ゴロイモなんです。」
オリバー
「ゴロイモ!?」
ロイズ
「信じられません。
ゴロイモがこんなに美味しく食べられるなんて。」
タチアナ
「初めてゴロイモを食べましたが、本当はもっと不味いのですか?」
ガロッソ
「すぐに育って収穫量も多い。
だが不味い。
食うに困った人間が仕方なく食べる。
そういうイモです。」
ガロッソさんにひどい言われ方しているけど、事実なんだ。
この国の料理の基本は焼くか煮るだ。
ゴロイモは焼くとパサパサしている。
煮ると煮崩れてぐちゃぐちゃになる。
だから使い難い。
しかも、芽には毒がある。
だから家畜の餌にも使うにも問題がある。
家畜も嫌がるイモ。
それがゴロイモ。
実は孤児院の畑で作っていたのはゴロイモでした。とにかく面積あたりの収穫量は文句無しのイモなのだ。
ただ不味いだけ。
でも油との相性は悪くない。
油を吸いやすいので調理には注意が必要だけど、ちゃんと調理すれば、美味しく食べられる。
それほど難しくないよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます