パエルモの孤児院
パエルモの郊外に孤児院はある。
古びた建物に庭。
庭の半分くらいは畑になっている。
大きな子どもが畑で作業をしている。
残りの庭のところで小さな子どもが遊んでいる。赤ん坊なんかもいるようだ。
外から覗いていると女の子が近寄ってきた。
女の子
「何かご用ですか?」
僕
「あ、え、その、寄付の相談を、、、」
女の子の表情が明るくなる。
素直なリアクションだね。
女の子
「ありがとうございます。
こちらへ!」
女の子がペコリと頭を下げた後、僕を建物に案内してくれた。
建物ではおばさんが掃除をしていた。
女の子
「かあさん、こちらの方が施設に寄付してくれるんだって。」
おばさん
「あら、ありがとうございます。」
僕のことを紹介して、女の子は走り去っていった。
僕
「すいません。突然。」
おばさん
「いえいえ、
いつ来て頂いてもいいんですよ。」
寄付目的で来ているって聞いてるからかな?
すごく優しい。
僕
「ありがとうございます。少しだけお話を伺ってもいいですか?」
おばさん
「ええ、かまいませんよ。
夕食の準備があるので、それほどゆっくり出来ないかもしれませんが。」
僕
「大丈夫です。少しだけですから。」
おばさん
「ええ、何をお話すればよろしいですか?」
僕
「今の孤児院の状況と困り事、一番の希望とか、そんな感じのことを教えて頂きたいんですけど。」
おばさん
「ありがとうございます。
孤児院に興味を持って頂けて嬉しいですわ。
孤児院の運営資金は基本的に領主様の御支援と寄付金で賄われています。
潤沢とは言えませんが、飢餓に苦しむほどではありません。
私は他の街の孤児院出身ですが、パエルモは豊かですし、優しい人が多いと感じます。」
なるほど。
まぁパエルモは食糧が豊富な街だからね。
僕
「悩みとか解決したい問題はありますか?」
おばさん
「そうね~、
私としては孤児院を出る子どもたちを助けてあげたいわ。
ここを出る子どもたちは手に職も無いし、親類や頼れる人もいない。もちろんお金もない。
だからね、まともな仕事につけないの。
冒険者になるか、身売りするか。
しかも冒険者になっても怪我をして、引退したり、悪事に手を染めてしまったり、、、」
僕
「そっか~。
なかなか難しいですね。
孤児院を出た後は助けてあげられないですからね。」
おばさん
「私も私の手の届く範囲しか助けてあげられないのが歯痒いわ。
もし、あなたのお店で雇って頂けるならお願いしたいんだけど。」
僕
「すいません。
今は人が足りているんで。
でも何か出来ないかは考えてみます。」
おばさん
「ありがとうございます。
でも無理はしないでね。
誰かを助けるのは、あくまでも余力でやらないと、共倒れになっちゃいますからね。」
僕
「おっしゃる通りですね。
すいません、長い時間、色々話を聞いちゃって。」
おばさん
「孤児院のことに興味を持ってもらえて嬉しいわ。また何か聞きたいことがあれば、いつでもいらしてね。」
僕
「ありがとうございます。
後、これ、寄付金です。」
おばさん
「あら!?
こんなに。
大丈夫なの?」
僕
「これでも儲けている商人なんで。
ご心配なく。」
おばさん
「それじゃ、有り難く頂くわね。」
僕
「それと、子どもたちにお菓子をあげても大丈夫ですか?」
何人かわからないから分けやすいクッキーを用意してきました。ただうちのクッキーは美味しいからね。でも勝手にあげちゃダメかなって思ったので。
マジックバックから大量のクッキーを取り出す。クルミを混ぜ込んで食感と栄養面をアップしています。
おばさん
「まぁ、ありがとうございます。
子どもたちも喜びますわ。」
僕
「今日は貴重なお話をありがとうございました。失礼します。」
おばさん
「こちらこそ、子どもたちへのご支援、ありがとうございます。」
おばさんと挨拶を交わして、孤児院を後にした。
タチアナ様との打合せまでに色々と考えをまとめないとね。忙しくなりそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます