デジーマにお呼びだし
実験農場がスタートし、平穏な毎日が過ぎた。当然だけど、種をまいてから収穫までは時間がかかる。長いものなら数年単位だ。
劇的な変化はない。
満腹亭も順調だし、休日はパウロで観光したり、リィズやフィオと料理の勉強をしたり充実している。
そんなある日。
デジーマのホンダ公爵からお呼びだしがあった。面倒ごとの予感はするけど、無視も出来ないからね。
仕方ないので、デジーマのホンダ公爵のお屋敷を訪問することにした。
門番さんに声をかけるとすぐに案内してくれた。ヒロユキの一件を解決した功績で、デジーマではちょっとした英雄扱いだからね。
案内してもらった部屋にはホンダ公爵が待っていた。それに騎士が1人ひかえている。イイジマさん?だったかな。
ホンダ
「すまんな、急に呼び出して。
よく来てくれた。」
僕
「いえいえ。
で、どうされたんですか?」
ホンダ
「そうだな。
単刀直入に言えば、うちの部下を鍛えて欲しいんだ。」
僕
「どういうことです?」
ホンダ公爵がざっくり説明してくれた。
今、アカツキ王国の王家がきな臭いらしい。
王様がご病気。
3人の王子がいて、長男と三男が王位を争う構図になる可能性があるらしい。
そしてホンダ公爵はアカツキ王国では影響力の大きい大貴族。間違いなく巻き込まれるらしい。
しかし、先日のヒロユキ率いるレッズとの戦いで戦力が低下している。そこで戦力強化に動いているとのこと。
ホンダ
「人数は集まった。
後は質だ。
主力になる精鋭を作りたい。
レベル上げをするためにジュカーイに騎士たちを冒険者のフリをさせて派遣する予定だ。」
僕
「僕にそのレベル上げを手伝えと?」
ホンダ
「その通り。
腕の立つ引率者がいる方が断然効率がいいからな。」
僕
「お断りします。」
ホンダ
「まぁ、待て。
おぬしが嫌がるのはわかっている。
ちゃんとアキラが喜びそうなお礼を用意している。」
僕
「僕が喜びそうなお礼ですか?」
ホンダ
「そうだ。
今、この周辺では茸の収穫期でな。
山にはたくさんの茸がはえておる。
騎士たちのレベル上げに協力してくれたら、デジーマ随一の茸が採れるタンバー山で自由に茸狩りを認めよう。」
僕
「本当ですか!?」
ホンダ
「もちろんだ。」
僕
「少し整理させてください。」
ホンダ
「かまわんぞ。」
僕
「レベル上げって何人をどれぐらい上げればいいんですか?」
ホンダ
「そうだな。
40人をレベル10上げて欲しい。」
僕
「今のレベルは?」
ホンダ
「レベルは20代だ。」
僕
「じゃあ、レベル40手前ぐらいまで上げればいいんですね。」
ホンダ
「そうだ。もちろん10以上上げてくれればボーナスも出す。」
僕
「ボーナス?」
ホンダ
「そうだ。
レベル40まで上げてくれれば、その人数に応じて、アキラが希望する職人や生産者、料理人などを紹介してやろう。」
僕
「太っ腹ですね!
わかりました。
お請けします。
お引き受けしますが、いくつか条件があります。」
ホンダ
「なんだ?」
僕
「まず、茸狩りはうちの店の従業員も参加させてください。みんなで楽しみたいんで。」
ホンダ
「わかった。」
僕
「それと、騎士たちには僕の指示に従うことを徹底させてください。」
ホンダ
「もちろんかまわん。」
僕
「それでは、いつ頃行いますか?」
ホンダ
「5日後出発でかまわんか?」
僕
「わかりました。
では、5日後の朝に伺います。
宜しくお願いします。」
ホンダ
「わかった。
こちらこそ、宜しく頼む。」
僕
「それでは失礼致します。」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
イイジマ
「私には彼が理解出来ません。」
ホンダ
「我々とは価値基準が違うだけだ。
それさえわかれば付き合いやすい男だよ。」
イイジマ
「レベル40を40人用意出来れば、万が一の場合にも大きな備えとなりますね。
彼を戦力に組み込めれば一番なのですが。」
ホンダ
「それは無理だな。
あまり欲を出すと痛い目にあう。
万が一にもアキラの逆鱗に触れれば一瞬で街が滅びるぞ。
日頃は穏やかだが、あの圧倒的な実力を忘れてはいかん。」
イイジマ
「仰る通りですね。」
ホンダ
「うむ。
イイジマ、騎士たちに5日後の朝に出発できるように伝えておけ。」
イイジマ
「はっ。」
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