ミトの旅立ち
ミト
「リズムリア王国のパエルモまで行ってくる。兄弟仲良く助け合って暮らせよ。」
息子
「父さん、遠過ぎるよ。
断れないのかい。」
息子
「そうです。
高齢の父さんには負担が大き過ぎます。」
ミト
「もう決めたことだ。
わしの人生最後の仕事だ。
笑顔で見送ってくれ。」
息子
「父さん、、、」
ミトさんが息子さんたちを順番に抱きしめていく。
僕もこの世界に来る前に親とちゃんとお別れしたかったな。突然転移したから心配していると思う。この世界から帰りたいという気持ちはないけど、それだけは心残りだね。
ミトさんが僕のところに戻ってきた。
ミト
「待たせてすまなかったな。
荷物を積み込んで出発しようか。」
僕
「そうですね。
あ、それと、ミトさんとそのご家族にお伝えしておかないといけないことがあるんです。」
ミト
「なんだね?」
ミトさんの息子さんたちも集める。
僕
「えっとですね。
ダンジョンで手に入れた特殊なアイテムのおかげで、パウロとパエルモの移動は1日かかりません。
なので、ミトさんも時々パウロに顔を出せます。それに荷物もほぼほぼ持っていけます。ただ、そのアイテムの存在が知られると狙われてしまうので、このことは内緒にしておいてください。」
一同
「「「「・・・。」」」」
なんか、全員黙りこんでしまった。
ミトさんが沈黙を破った。
ミト
「本当なのか?」
僕
「これが嘘だったら笑えないでしょ。」
ミト
「では、パウロにまた帰って来られるんだな。」
僕
「もちろん。
ただ、貴重なアイテムで貸し出せないから、僕と一緒の時だけだけどね。
月1ぐらいなら問題ないよ。
荷物もマジックバックがあるから、よほどの物以外は簡単に運べるよ。」
ミト
「・・・そうか。
すまんな。
セントラル大陸の東部の国に行くと聞いてな。みんな今生の別れと思っていたんで、気持ちの整理が追いつかんのだ。」
僕
「気にしないでください。
とりあえず持っていきたい荷物をこのマジックバックに詰め込んでください。」
ミトさんにマジックバックを渡す。
ミトさんとその息子家族がみんなで手伝いながらマジックバックに入れていく。
ミト
「パエルモでは、どれぐらいのスペースがあるんじゃ?」
僕
「この家より少し広いぐらいかな。」
ミト
「家も用意しておるのか?」
実は実験農場の指導者を探しに行く前に大工のゲイツさんに依頼しておいたんだ。
家族で住めるぐらいの簡易な家。
いつでも設置できるようにマジックバックに入れてある。
今後も使うかなって思ったので後数軒分を発注してある。今後も急に家が必要になっても困らないはず。
家にあった荷物はほぼ全てマジックバックに詰め込んだ。そして、お別れの時。
でも、なんか、ちょっと白けた空気が流れている。さっきの感動的な光景とは全然違う、淡白なお別れ。
ミト
「じゃあ行ってくるぞ。」
家族に手を振るミトさん。
ミトさんの家族も手を振っている。
そして僕のリターンポイントでパエルモに移動した。
ミト
「ここは?」
いきなり目の前の景色が変わったことに戸惑うミトさん。
僕
「パエルモです。
僕の実験農場は街からは離れているので、ちょっと移動しましょうか。」
ミト
「そりゃ、そうじゃな。
話を聞く限り、街の近くにあれば混乱が生まれるだろうな。
どれぐらいの距離だ?」
僕
「馬車で半日。
僕なら数十分です。」
ミト
「ん?」
僕とミトさんの体がふわりと浮き上がる。
ミト
「な!?」
そして、一気に加速。
ミト
「のわっ!?
なんなんだっ!!」
ミトさんの悲鳴にも似た叫びを無視しつつ、実験農場へ出発した。
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