百錬

覆面レスラーの攻撃が続くなか、隙をついてメイスを振るう。


カーン


硬い。

金属を叩いたような感覚。

実際はこのメイスで鉄を叩けば、粘土みたいに簡単にグニャってなるんだけどね。


全力で叩けば簡単に倒せるだろうけど、雰囲気も大切だからね。

覆面レスラーの攻撃を避けながら、メイスを当てる。

さすがにレスラーの拳とメイスを正面からぶつけるとメイスが壊れそうなので、避ける・当てるを繰り返す。


何度も殴ると。

「ウォォォォォ!!」


覆面レスラーが咆哮した。

全身に赤黒いオーラが立ち上る。


スピード、パワー、どちらも格段にアップしている。でも体には負荷がかかってそうだね。少し苦しそうだ。


赤黒覆面レスラーの攻撃を避けながらメイスで殴る。多少相手がパワーアップしてもやることは一緒だ。

3分とかからず淡々と戦いは終了した。


『見事だ。

 無双の闘士よ。

 百錬を授けよう。

 人間の限界を超えた武技だ。

 百錬を使いこなせるようになれば、

 更なる高みに近付けるだろう。』


百錬

・乾坤一擲 単体攻撃

・百花繚乱 範囲攻撃

・万人敵  広範囲攻撃

・神殺   極限攻撃



手に入れたスキルは『百錬』。

攻撃用のスキルだ。


前にヒルギスのダンジョンで手に入れた『禁術』は魔法系のスキルだった。

それの武技バージョンって感じかな。

禁術に比べるとMPの消費が少ない。

使いやすくなっている。ダメージ量も力に依存するから戦士系の職業向けだね。


『神殺』。

これで『かみごろし』と読むらしい。

不穏過ぎるよ。

禁術にも『神滅』ってのがあったよね。

どうもダンジョン攻略で手に入るスキルは神様を殺したり、滅したり、したいらしい。


今回はハズレかな。

使い道がない。

スプーンは食事でも使えて便利だし。

禁術は移動手段として便利だし。

ダンジョンマップは移動特化の便利アイテムだ。


とりあえず、ダンジョンを出よう。

もう、特に用がない。



ダンジョンで暇潰しをしていると、いつの間にか日数が経っていた。ガウル国王が熟練の農夫を用意してくれる日がきた。


パウロの王宮に行くとテッドさんが待っていた。テッドさんの隣には老犬っぽいおじいさんが立っている。


テッド

「アキラさん、こちらはミトさんです。

ミトさんはパウロでも有数の農業の専門家です。今は現役を引退されてご自分の研究に集中されています。」


ミト

「ミトだ。

新しい農業の実験をしようとしているらしいな。どんな実験なのかね?」


僕は実験農場のことを簡単に説明した。


ミト

「ほう。

面白いの~。

実は今、新しい種を作ることを研究していてな。それに協力してくれんか?」


「品種改良ですか?」


ミト

「よく知っとるな。

今、病気になりにくい品種作りを作っているんだ。」


「面白そうですね。

僕に出来ることがあれば協力しますよ。

出来れば美味しくて、収穫量が増えて、病気や虫に強くて、、、」


ミト

「そんなに一度には出来んぞ。

品種改良はゆっくり一歩ずつ進んでいくしかないんだ。」


「すいません。

焦っちゃいましたね。

とにかくミトさんの研究を応援しますよ。」


ミト

「すまんな。

出来る限り研究途中の種や資料を持って行きたいんだが、どれぐらい可能かの~?」


「う~ん、

家以外ならだいたい持っていけますよ。

ミトさんの家に行きましょうか?」


ミト

「そうだな。

荷物の積み込みも手伝ってもらえると有難いし、家まで来てくれるか。」


「わかりました。

テッドさん、ありがとうございました。」


テッド

「こちらこそ感謝してますよ。

またパウロに来られることがあれば、またお会いしましょう。」


「ええ。それじゃ。」


テッドさんに手を振って別れた。



ミトさんの家に到着すると整理されていた。

ミトさんは妻に先立たれ、子どもたちが独立したため、小さな家で一人暮らしをしていたようだ。

3人の息子とその家族が見送りに来ていた。

なんか心温まる光景だね。

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