農業は甘くない

翌日。

手に入れた種や苗、苗木を持って実験農場を訪問。

農業の専門家ということでウィリアムさんとニコラスさんも同行をお願いしました。


ウィリアム

「凄まじい移動速度ですね。」


ニコラス

「今も不思議な感覚ですよ。」


空を飛んで移動するのに驚く2人。最近は空を飛ぶのが普通になり過ぎてたのかも。



僕たちが実験農場に到着すると、モルガンさんが出迎えてくれた。


モルガン

「アキラ様、いらっしゃいませ。」


「こんにちは。

今日は南の国の種とか苗をいっぱい持ってきたから、少し相談したいんだけど大丈夫かな?」


モルガン

「もちろんです。

正直、今は暇な状態でしたので。」


実験農場は半分も埋まっていない。

ここの目的は季節をずらした作物の収穫と、南国の作物の栽培だ。どちらかと言うと後者がメイン。だからまだまだ使っていないハウスの方が多い状況だ。


種や苗、苗木を区分けしていく。

かなりの種類と量だ。


「「「・・・。」」」

沈黙。


ウィリアムさん、ニコラスさん、モルガンさん、みんな知らない植物ばかり。

みんな、何をどうすれば良いのかまったくわからない。

これがどれぐらいの大きさに育つのか?

多年草、一年草?

実を食べるのか、葉を食べるのか。


わからない物は計画も立てられない。


「・・・ごめん。

よく考えたら、

知らない植物をいきなり育てろって言われてもどうすればいいかわからないよね。

ちょっと指導できる人を連れてくるから、それまで苗とか苗木が枯れないように世話をしといてもらえますか。」


モルガン

「それぐらいなら大丈夫です。

今は冬でもないので、水をあげていれば大丈夫だと思います。」


「よろしくね。

ウィリアムさんとニコラスさんもごめんね。

わざわざ一緒に来てもらったのに。」


ウィリアム

「我々も力不足で申し訳ございません。」


とりあえず、モルガンさんたちに多少の差し入れをして、ウィリアムさんとニコラスさんを送り届けて帰宅。


南国の農業の専門家。

そんな知り合いはいない。

でも話が早そうな人は知っている。



僕はダンジョンマップを使用してパウロに移動。パウロの王宮を訪問。

普通なら王宮にアポ無し訪問なんて絶対NGだけど、ごめん、許して。


門番に挨拶をして、ガウル国王に取りついでほしいと伝えると、すぐに別室に案内された。

門番は僕の顔を知っている感じじゃなかった。牙の首飾りのおかげなのかな?


別室でしばらく待つとガウル国王の執務室に案内された。


ガウル

「どうしたんだ?

突然訪ねて来て。」


「実は、、、」


もらった種や苗の育て方がわからず、農業の専門家の指導を受けたい、という状況を伝えた。


ガウル

「ハッハッハッ

それはそうだろう。

パエルモの野菜や果物とは全然違うからな。パエルモの農夫にはわからんのは当然だ。」


「はい。

僕の見込みが甘かったです。」


ガウル

「それで私を頼ってきた、という訳だな。」


「パウロのことはパウロの国王であるガウル陛下に伺うのが一番早いかと思いまして。」


ガウル

「私も回りくどいのは嫌いだ。

熟練の農夫を紹介して、しばらくの間、アキラに協力させることは出来るぞ。」


「本当ですか。」


ガウル

「もちろんだ。

ただし、条件がある。」


あ~、

なんか条件を聞く前から想像出来るわ~。


「なんですか?」


ガウル

「私と戦え。

戦えば、農夫を紹介する。

更に私に勝てば、こちらで経費も契約も済ませよう。パエルモで1年間指導させる。移動期間は含まない。

私に負ければ、アキラが紹介した農夫と交渉しろ。スカウト出来るかどうかはお前次第だ。」


やっぱりね。

予想通りだ。

こりゃ、勝つしかないね。

自分で交渉する自信なんてまったくないからね。

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