テッド対ガウル

ダンジョンでのトレーニングを終えた翌日。

パウロの騎士団の訓練所で試合が行われることになった。


国王対王女の恋人。

一般公開はされないが王宮や騎士団などの関係者が多数つめかける注目の一戦となった。

ちなみに僕はテッドさんの修行に付き合った師匠として、テッドさんに一番近い場所で観覧が認められている。


武器は訓練用の木刀を使用。

防具は自前の物を装備可能。

防御力が高くなる状況で行われる。


テッドさんの希望で、正々堂々と戦う、ということで僕からの補助魔法などは無しにしてある。




訓練所に入ってくる2人。

ガウル国王は威風堂々。やる気満々。

一方、テッドさんは緊張しているのが誰の目にも明らかだ。


ガウル

「逃げずに戦いの場に出てきた勇気は認めよう。その勇気に応える為にも、全力で叩きのめしてやる。」


ガウル国王は単純に戦いを楽しみたい、という感じだ。生粋の戦闘狂なのだろう。


テッド

「結婚を認めて頂くまで私は戦います。」


言ってることは勇敢だけど、緊張と不安が態度に如実に表れている。


「テッド! むちゃしないで!」

きれいな女性から心配をする声があがる。

あれが結婚相手のキララさんかな?


審判役の騎士が中央に立つ。


審判

「これよりガウル国王陛下と文官のテッド氏の試合を行う。

時間は無制限。

死亡、気絶、敗北の宣言をもって勝敗を決します。

なお、陛下を亡くならせる訳には参りませんので、命の危険があると判断した場合は私が割って入ります。

その場合は陛下の敗北となります。」


つまり、テッドさんが死にそうになっても騎士は助けてくれないってことだね。

今の説明を聞きながらガウル国王は不満顔をしているが、仕方なく受け入れているという感じだ。


審判

「はじめ!」


審判のかけ声と同時に動いたのはテッドさんだった。開始と同時にガウル国王に突撃する。

テッドさんの決死の突撃。

猛烈な勢いで体ごと突きを放つ。


しかし、ガウル国王は巧みに勢いを逸らさせる。


攻撃が外れてもテッドさんは止まらない。

連続攻撃を放つ。

次々に放たれるテッドさんの本気の攻撃。


しかし、ガウル国王には直撃しない。

見かけによらず上手い。

テッドさんは野生の獣のようにトップスピードで突撃する。

ガウル国王はそれを巧みにさばく。

圧倒的な戦闘経験の差だろうね。


そして、

テッドさんの攻撃を数回避けた後。


ガウル

「実力はわかった。

いくぞ!」


ガウル国王が反撃を始める。

テッドさんに巧みに避けるような技量はない。基本スタイルは思いっきり避けて、再度突撃。しかし、そんな粗っぽい攻撃はガウル国王に通用しない。


ガウル国王の木刀がテッドさんのわき腹をとらえる。


テッド

「うぐっ、、、」


テッドさんから苦悶の声が漏れる。

しかし、テッドさんは止まらない。

再度突撃。

ワンパターンだが、それしか出来ないのだ。


今度は左肩。

パキッ

おそらく鎖骨が折れた。


テッド

「う、うぅ、、、」


どうやら左腕に力が入らないらしい。

テッドさんは右手だけで木刀を握り突撃する。


テッドさんの動きに最初のような勢いはない。鬼気迫る表情で、気持ちだけで体を動かしている。


木刀がテッドさんの右足の太ももに当たる。


テッド

「ぐぅ、、、」


足を引きずりながらもまだ踏み込む。

剣を必死に振り下ろす。

そこを狙って、手の甲を木刀が打つ。

衝撃で木刀を落とすテッドさん。


テッド

「う、ぅ、、」


武器を拾う余裕はない。

テッドさんは素手で殴りかかる。

ガウル国王の突きが腹部にめり込む。


テッド

「ぐはっ!?」


前屈みになったところにガウル国王が木刀を振り下ろす。


バタッ

テッドさんが気絶し、倒れた。


何ヵ所も骨折し、瀕死の重傷だと思う。

テッドさんは必死に頑張ったけど、経験の差を埋められなかった。

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