テッドの特訓

翌朝、ダンジョンで待ち合わせ。

やって来たテッドさんは革鎧に兜、剣を装備していて、昨日とは全然違う雰囲気だ。


正直、全然似合ってない。

テッドさんは完全インドア派な見た目をしている。ヒョロっとした体に革鎧や兜がミスマッチだ。

この装備一式は貯金をはたいて買ったらしい。ダンジョンのあるパウロでは武器や防具は手に入りやすい。


「とりあえずテッドさんには能力アップの魔法をかけます。いつもより強くなりますので、格上のモンスターとも戦えるようになるはずです。どんどん進んでどんどん倒しましょう。」


テッド

「よろしくお願いします。」


頭を下げるけど、兜の重みでフラフラしている。


テッドさんは弱かった。

『書士』という非戦闘職レベル2。

へっぴり腰で剣を振り、その重みに振り回されている。


たぶん、無理矢理レベルだけを上げても意味がない。戦闘の経験を積まないと。


テッドさんを先頭に、後ろに僕がつく。

ドラには周囲を見てもらって、下の階へのルートを調べてもらっている。

テッドさんのステータスは本来の値より、全項目プラス15になっている。ざっくりだけど、レベル30ぐらい上乗せしている状態だ。


それでも悪戦苦闘しながら、

1階、2階、3階と進んでいく。

僕とドラだけなら1日で20階ぐらい進むのに、今日は5階で終わった。

それでもテッドさんはフラフラになってたけどね。



2日目。

朝からテッドさんを連れて、僕らのスピードで移動した。昼には15階に到着。

そこからはテッドさんにペースで移動する。

本来が近くからサポートし、ドラは先導しながら、最短ルートかつ、戦闘回数は増えるようにモンスターを誘導する。


テッドさんに戦闘センスはない。

あるのはやる気と僕の補助魔法によるステータスだけだ。

とにかくモンスターを見つけたら、躊躇なく飛び込んで、全力で攻撃する。ミスをして反撃を受けることもあるけど、僕が死なないようにサポートする。


僕も細かい技術なんて教えられないし、それを学んでいる時間もない。

決死の突撃とそこからのラッシュで押しきる。そういう戦闘を繰り返した。


2日目は17階で終了。

午後は遅々として進まなかったけど、テッドさんの動きはかなり良くなってきている。

非戦闘職のため、レベルアップによる恩恵は分かりにくいが、確実に強くなってきている。



3日目。

17階からのスタートで25階までは僕の力であっという間に移動する。昼前には到着。

25階からは再びテッドさんの特訓を再開。

ここで1つ問題が発生。

テッドさんが購入した装備はCランク冒険者向け。そろそろ装備が物足りなくなってきている。25階ともなればBランクが見えてくる頃合いだ。

仕方ないので、僕の死蔵品から適当に貸し出す。剣、革鎧、兜というセットは同じにしておく。ただ、これで50階ぐらいまで装備に関しては問題なく進めるはずだ。


テッドさんも吹っ切れたのか、がむしゃらにモンスターに飛びかかっていく。鬼気迫る勢いだね。初見のモンスターでもお構い無しに突っ込んでいく。

その日の夕方には28階に到着し、レベルも27に到達した。


4日目。

28階からスタート。

とにかく戦って、戦って、戦って。

ゆっくりだが、確実に進んでいく。

32階でタイムアップ。

やはり、戦闘職ではないため階が進めば進むほど苦労させられる。

だけど、メンタル面は大きく成長した。

初日のへっぴり腰は完全に消え失せ、鬼気迫る表情で突貫する狂戦士のようだ。


5日目。

ダンジョンは本日で最終日だ。

明日はテッドさんとガウル国王の試合だ。

今日は仕上げということで、午前中は僕のスピードで進む。

そして午後からは戦闘中心に行う。


結局、51階まで到達し、テッドさんのレベルは50まで上がった。

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