朽ちた杯

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

今回はアキラは出てきません。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


パエルモの場末の酒場。


ゲイル

「クソッ! なんで俺たちが降格なんだ。」


ウィッツ

「しかも、1年間の昇格停止なんて。」


コリンズ

「実力はCランク並なのにEランク、、、」


彼らは『黄金の杯』という元Dランクパーティー。今はEランクになっている。


降格した理由は元ギルドマスター、マックスウェルの不正に加担したためだ。

事件そのものが公表されなかったため、『黄金の杯』のメンバーについても処罰はされたが、ゆるい処罰になっている。


1ランクの降格及び1年間の昇格停止


本来ならば冒険者ギルドからの追放もあり得た事案だ。ただ主犯がギルドマスターだったことから、彼らは減刑されたのだ。



一般的に見れば、甘い処置。

しかし、本人たちは納得していなかった。


ゲイル

「1年は長過ぎる。

もう戻る時間がないじゃないか。」


ゲイルは貴族の三男である。

家督相続の可能性はなく、パエルモ王国第三騎士団に入る予定である。

貴族の次男や三男などで構成される第三騎士団。その中でCランクとなれば間違いなく実力者、精鋭とみなされる。騎士団内部での出世の可能性も高い。

騎士団でも上層部に入れば一代限りの爵位が与えられる。

つまり貴族に成れるのだ。


貴族の三男に生まれたゲイルが貴族になるにはそれしか道はなかった。

しかし、Eランク。

これでは平均以下。

冒険者をやっていたことすら公表が憚られる。


ゲイルはCランクになるため、マックスウェルに近付いた。マックスウェルも貴族の次男だった。置かれた環境が似ている2人は意気投合し、なにかと便宜を図ってもらっていた。


それなのに、、、


ウィッツ

「なんでこんなことに、、、」


コリンズ

「ロイズとアキラのせいだ。」


ゲイル

「そうだ!

俺たちの昇格は決まってたんだ。

それを邪魔しやがって!」


完全な逆恨みである。

3人は安い酒をあおりながら愚痴を言い続ける。


ゲイルは騎士団での出世が途絶えた。Cランクなら騎士団で出世出来る保証なんて何もなく、本人の勝手な妄想なのだが。


コリンズは商人の息子である。貴族とのコネは有効だ。だが、頼みの綱のゲイルが今回の一件で実家から勘当寸前のため期待出来なくなった。


ウィッツはゲイルとコリンズが冒険者を辞めた後のことを考えている。見た目が整っている以外に特に長所のないウィッツ。ゲイルたちとギルドマスターのコネを使わないとCランクに上がれる見込みが無い。Cランクになってさえしまえば、選べる仕事が一気に増えるのに、独力でなれる気がしない。



そんな3人は過ぎたことに延々と愚痴をこぼすだけ。未来に向けて建設的なことを何も考えていない。


ゲイル

「なんとか仕返しをしてやりたいな。」


ウィッツ

「でもロイズは常に護衛をつけているぞ。」


コリンズ

「それに相手は不当人事とは言え、ギルドマスターですよ。もし手を出したのがバレれば、何をされるか、、、」


ゲイル

「クソッ!

不平等だ!」


コリンズ

「アキラなら問題無いんじゃ?」


コリンズは一度アキラに命を救われているのに、まったくその事が頭に無いらしい。


ウィッツ

「でも、あいつとあいつのモンスターは強力だ。迂闊には手を出せないぞ。」


コリンズ

「今日、店の前を通りかかったけど、あいついなかったぞ。」


ウィッツ

「どっかに出掛けているのか?」


ゲイル

「俺たちの邪魔をしたあいつから全てを奪ってやろう。」


ウィッツ

「どういうことだ。」


ゲイル

「あの店、相当流行っているだろ。」


2人がうなずく。


ゲイル

「あいつがいない間にため込んだ金品を奪って店を燃やしてしまうのさ。

店が燃えれば金品が盗まれていることもわからないだろ。」


ウィッツ

「たしか、あいつの店、女、子どもばかりだったな。へへへ、あいつさえいなけれゃチャンスだな。」


コリンズ

「毎日満席みたいですからね。かなりの金があるはずです。」


ゲイル

「明日、調べてチャンスなら夜にやるぞ。」


ウィッツ・コリンズ

「「おう!」」

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