希望の褒美

バニル

「なるほどな・・・。

アキラはこれからどこに行くんだ?」


「ダンジョンのあるパウロに行くつもりです。」


バニル

「そうか、パウロか。

パウロなら陸地も広い。

探している野菜や果物の種なども手に入る可能性があるな。」


「良いことを聞けました。

パウロで探してみます。

ありがとうございます。」


バニル

「まぁ待て。

探すと言っても伝手は無いのだろ?」


「そうですね。

なにせハンドル群島に来るのが初めてですから、知り合いは誰もいません。」


バニル

「そうか。

それなら今回のお礼として、紹介状と礼金を渡そう。パウロの国王とは懇意にしている。私の紹介であればむげにはせんだろう。

それで希望の物を買いなさい。」


「ありがとうございます!

すごく助かります。」


バニル

「そうか。

この程度で喜んでもらえると楽なもんだ。

準備をするから少し待ってくれ。」



バニル国王が退室した。

僕は応接室にお茶と菓子を食べながら待たせてもらう。

菓子は果実のシロップ漬けみたいな感じ。


甘い!

強烈に甘い!

甘ければ甘いほど高級って発想なのかな?

これはちょっとキツイ。

甘い物は好きだけど、限度を超えている。

元の果実の味はもう全然わからない。


しばらくするとバニル国王が戻ってきた。


バニル

「待たせたな。

これが紹介状。

これが礼金だ。」


手紙と金貨の塊を渡された。


「ありがとうございます。」


バニル

「それと、これを身につけておきなさい。」


首飾り?みたいなのをくれた。

親指ぐらいの牙を模した物に、模様が彫られている。


バニル

「これは牙の首飾りという物だ。

彫られている紋章はサンティ王家の紋章だ。

これを持つ者は

『サンティ王家が認めた戦士』という証になる。ハンドル群島では各国王だけが作ることを許されている。

これを身につけていれば信用度が大きく上がる。無用なトラブルも回避出来るだろう。」


「ありがとうございます。」


さっそく牙の首飾りに頭を通す。


バニル

「それと、

これはここからパウロまでのルートを書いたものだ。今の時期なら、このルートが一番早いだろう。」



ハンドル群島の移動手段は船だ。

船を使って、島を順番に移動して目的地にたどり着く。直通便のような便利な船は無い。ハンドル群島に慣れない人間は乗り継ぎがわからず、なかなか目的地にたどり着けないこともあるそうだ。

その上、船旅は海流や風によってスピードが変わってくる。おまけにモンスターの多発エリアは避けて通る。そのため、季節によって最短ルートは変わるらしい。


バニル国王はかなり親切な国王様だな。

しかも、僕の行動を考えて色々サポートしてくれている。

もっとも、僕が空を飛んで移動するとは想像してないだろうけどね。


「色々とお気遣いありがとうございます。」


バニル

「では、気をつけてな。」


「ありがとうございます。

失礼致します。」


こうしてバニル国王との面会を終えて、ようやく出発。サンティでは予定外に日数がかかってしまった。まぁ、急ぐ旅でもないし、気楽に行こう。

ダンジョンのあるパウロまでは飛んで行くだけだから、特にトラブルもないだろう。

パウロに到着したらダンジョンに入る前に、この紹介状を出して野菜や果物の種などを手に入れよう。

リターンポイントで一度帰宅して種とかは実験農場に持って行こう。

ダンジョンはそれからでもいいよね。


ダンジョンにはモンスターたち全員で入ろうかな。みんな戦うの好きだし。

街の雰囲気が良さそうなら、満腹亭のみんなも誘おうかな。

週末の1日だけでも、南国気分が味わえたらいいよね。



そんなことを考えながら、ドラの背中で就寝。寝袋に入って、結界で固定している。

昨日の夜は眠れなかったからね。

疲れていたのか、すぐに眠りに落ちた。

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