ゴロンゴ商会
タヌキのような獣人は男を出迎えると奥の部屋に招き入れた。
部屋の外に音が漏れないように魔法が施されている。
僕は部屋の中までついて入ったから関係ないけどね。
タヌキ獣人
「準備はどうだ?」
男
「大きな問題はない。
だが、予定していたよりも人数が少なくなってしまった。」
タヌキ獣人
「何人だ?」
男
「34人だ。
途中で2人死なれた。」
タヌキ獣人
「誤差の範囲だな。
報酬はちゃんと振り込んでくれよ。」
男
「もちろんだ。
あんたの協力のおかげで成功率が大幅にアップした。誰も獣人の商会の船を怪しまないからな。
今後も協力関係を維持していきたいと考えている。」
タヌキ獣人
「けっこう。
船はいつもの船着き場に停めてある。
椰子の実を輸送する船だ。」
男
「わかった。
今日の深夜に運び入れる。
出発は明日の早朝だ。」
タヌキ獣人
「くれぐれも騒ぎは起こすなよ。」
男
「もちろんだ。」
話を終えると男は店を出た。
そのまま倉庫に向かい、倉庫にいた仲間たちと最終確認を行っていた。
事件の全容が見えてきた。
セントラル大陸の人さらいとサンティのゴロンゴ商会がグルになってる。
確かに獣人の子どもが拐われる事件があれば人間が疑われるだろう。獣人の商会の船はノーマークかもしれない。
どこにでもお金の為にはなんでもやる連中はいるもんだね。
そして深夜。
子どもたちが箱に押し込まれていく。
その箱を静かに男たちが荷台に積み込んでいく。ここがバレる可能性のあるポイントなのだろう。男たちも慎重だ。
子どもを入れた箱を積んだ馬車が出発する。
倉庫の留守番は2人。
残りは子どもたちと一緒に馬車で移動する。
馬車は2台。
馬車の追跡はひとまずドラに任せる。
僕は倉庫に残った2人を気絶させ拘束する。
念のため、子どもたちが入れられていた牢屋に入れておく。
僕は倉庫を出て、上空を移動するとすぐにドラを発見出来た。
ドラ
『あの船だ。』
波の音しかしない夜の船着き場で男たちが黙々と荷物を船に積み込んでいく。
船旅は長い。
さすがにずっと箱の中には置いておけないだろう。おそらく船の中に牢屋のような場所があるんだろう。
男たちは荷物を積み終わると、馬車担当の2人を残して、船に乗り込んでいく。
さてと、もう十分かな。
そろそろ本格的に動き出そう。
僕も顔を隠して身元がバレないようにする。
馬車担当の2人を気絶させる。
もちろん物音なんてたてない。
一瞬の出来事だ。
船にいる人間は片っ端から気絶させていく。
甲板にいた見張りも一瞬のうちに気絶させる。警戒の合図なんか送らせない。
中にいる人間も次々に気絶させる。
船内は二重床になっていた。
船の底にほどほどの空間があった。
出入口は1つ。
ここに子どもたちが押し込まれていた。
人さらいたちもいる。
34人が船旅をするには明らかに狭い。
どうせ、食事や衛生面もひどいもんだろう。
出入口にいた男を気絶させる。
音もなく崩れる男。
しかし、仲間たちもさすがに気付いた。
男
「何者だ!」
ゴロンゴ商会に顔を出していた男だ。
僕
「名乗る必要はないでしょ。」
男
「そうだな。
ここで死ぬ男の名前に興味はない。
だが、誰の差し金かは吐いてもらうぞ。」
僕
「出来るものならね。」
男の仲間たちが僕に襲いかかる。
遅い。
全員を一瞬で気絶させる。
あっという間に戦闘は終わった。
拐われてきた子どもたちは不安そうな面持ちでこちらを見ている。
僕
「大丈夫。
味方だよ。
これから街の衛兵の詰所に行こう。
ちゃんと保護してもらえるはずだから。」
子ども
「ほ、本当に、、、?」
子ども
「僕たち助かるの?」
僕
「もちろん。
家に帰れるよ。」
子ども
「やったー!」
子ども
「信じられない!」
子ども
「夢みたい!」
子どもたちの笑顔を見られただけでも、助けた甲斐があったね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます