救いの手

アルガスはネチネチと言ってくるけど、会話は噛み合わない。

まぁ、やってもいない不正を認めろ、と言われても、認める訳がないじゃない。


この世界に来る前の僕だったら圧力に負けて認めたかもしれないけど、今の僕には十分な力がある。いつでも、その気になれば力ずくで出ることは出来る。

それが心の余裕になっている。


僕の余裕の態度がアルガスは気に入らないらしい。だんだんイライラしてくる。


アルガス

「もういい!

体に聞いてやる!」


再び警棒を取り出すアルガス。


ガチャッ


職員さんが飛び込んで来る。


職員

「さすがにそれはまずいのでは。」


アルガス

「邪魔するな!

私はギルドマスターから尋問を任せれているんだ!

やり方は私に任されている!」


職員

「しかし、、、

後で問題になれば、ギルドマスターにも迷惑がかかる可能性がございます。」


アルガス

「くだらん!

こんなヤツがどうなろうが知ったことか!

ギルドマスターの命令を完遂することが何よりも優先される。

お前もこれ以上邪魔するなら同罪だぞ!」


狼狽する職員さん。

マックスウェル陣営のフリをして、ロイズさんのサポートをすることになっているんだろう。これ以上僕を庇えば作戦に支障が出る。でも目の前で僕が暴行されるのを見過ごすことも出来ない。


どうしようか迷う職員さんを無視してアルガスが警棒を振り上げる。


バタバタバタバタバタバタ


扉の外が騒がしくなる。


アルガス

「何事だ!?」


バンッ!

扉が強引に開かれて、騎士たちがなだれ込む。先頭にいた騎士に見覚えがある。


騎士たちの後に悠然とパエルモ伯爵が入って来る。


パエルモ

「アキラよ、

帰るぞ。」


アルガス

「な、なんなんだ!?」


ヒース

「無礼だぞ!」


騎士が睨み付ける。


アルガス

「ひっ」


アルガスが悲鳴を漏らす。


そこにマックスウェルがやってきた。


マックスウェル

「パエルモ伯爵、

何故こちらにいらっしゃったのですか?」


パエルモ

「アキラは私の大切な友人だ。

身柄をもらい受ける。」


マックスウェル

「冒険者ギルドは国から独立した組織です。

いくら伯爵といえ、不当な干渉はお控え頂きたい。」


パエルモ

「くだらんな。

私には街を守る責任がある。

愚か者の暴挙で街を危険に晒す訳にはいかん。

アキラは連れ帰る。

そこは譲らん。」


マックスウェル

「そんな無法が許されるとでも!」


パエルモ

「そこを空けなさい。」


マックスウェル

「後々問題になりますよ!」


パエルモ

「好きにしろ。

帰るぞ。」


パエルモ伯爵に連れられて冒険者ギルドを出た。



パエルモ

「よし。

家に帰っていいぞ。」


「ありがとうございます。

でも、どうして?」


パエルモ

「ガロッソだ。

あいつが私のところに駆け込んで来てな。

お前が冒険者ギルドに捕まった、

すぐに助け出さないとモンスターが暴れだすかもしれないと言ってきた。

そんなことを聞いては助けに行くしかないだろう。」


ガロッソさんがパエルモ伯爵にお願いしてくれたらしい。

有難い。

後でお礼を言わないと。


パエルモ

「速く家に帰ってモンスターを落ち着かせてくれ。不安で仕方ないわい。」


「すいませんでした。

それと、本当にありがとうございます。」


僕は頭を大きく下げた。

パエルモ伯爵は騎士を引き連れて去っていく。


僕はすぐに満腹亭に向けて駆け出した。

お店に帰ると、みんなが出てきてくれた。


リィズ

「お帰りなさい!」


フィオ

「大丈夫でしたか?」


「大丈夫だよ。パエルモ伯爵が出られるようにしてくれたんだ。

パエルモ伯爵にはガロッソさんが話を通してくれたみたい。」


マユラ

「アキラ君が連れていかれて、すぐにアイラがコーラル商会に走ったからね。」


アイラ

「アキラが大人しくついて行ったのに力任せなことは出来ないからな。」


ルーシュ

「アイラさんはさすがです。

私はパニックでどうしたらいいかわからずおどおどするだけで、、、」


アリエッタ

「アイラがすごいだけよ。

みんな、どうしよ~って感じだったし。」


マユラ

「そうそう。」


「みんな、心配かけてごめんね。

でも、もう大丈夫だから。」

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