バレティア攻防戦
翌朝。
ドバン帝国軍の後退の情報はすぐにバレティアに伝わった。
セージ
「どうなっている!?」
騎士
「詳細は調査中です。
ですが、夜間にドバン帝国軍にて同士討ちが起きた模様。
野営地を放棄し、後退しました。」
セージ
(アキラのモンスターか、、、
・・・恐ろしい能力だな。)
セージ
「急ぎ状況を確認せよ!」
結果としてドバン帝国軍は大きな損害を出し、約1日分の距離を後退。
野営地に残してきた兵糧はバレティアの斥候に焼かれてしまった。
兵糧を大量に失った帝国軍は部隊の再編や兵糧の補充などに時間を取られ、大幅に進軍が遅れてしまった。
ようやくバレティアに到着した帝国軍はバレティアの守りを一気に強行突破するには兵士の数も士気も足りなかった。
帝国軍は包囲して持久戦を選択するより仕方なかった。
減ったとは言えまだ帝国軍の方が数は多い。
包囲されたバレティア騎士団も簡単に街の外に兵を出せない。
バレティアの外壁は厚く高い。
それを活かして防御主体の作戦をとることになった。
両者の消耗戦は続いた。
形勢が一気に動いたのは数日後である。
リズムリア王国の援軍が到着したのだ。
ドバン帝国軍は進軍が大幅に遅れたため、援軍の到着までに決着をつけることが出来なかった。
こうなると内と外の挟み撃ちを受ける帝国軍はこらえきれない。
退却を余儀なくされた。
ドバン帝国の進攻は失敗に終わった。
ドバン帝国が失ったものは大きい。
元々、農業が盛んなリズムリア王国を占領して、ドバン帝国の食糧事情を改善し、更なる領土拡大を行うつもりだった。
しかし、結果は大失敗。
兵も物資も浪費することになった。
この世界の戦争において、捕虜になった者の辿る道は3つ。
貴族などは実家から身代金が支払われ解放される。
捕虜の交換が行われ、双方の捕虜が交換・解放される。
身代金が支払われなかった者、交換の対象とならなかった者、そういった者は戦争奴隷となり、相手の国の労働力にされてしまう。
戦争で負ければ多くのものを失うのだ。
一方、パエルモ。
パエルモの街もバレティアでの戦いに勝利するまでは異様な空気に包まれていた。
バレティアが落とされれば、次に攻められるのはパエルモである。
パエルモは交易と農業の街だ。
防衛能力は低い。
バレティアの状況次第では街から逃げ出そう、そう考える市民も少なくない。
もっとも一般的な農民はそんな情報はすぐには入ってこない。
真っ先に動くのは情報を手に入れられる貴族と商人だ。
だが、パエルモ伯爵が落ち着いた対応を見せたため、逃げ出す貴族はいなかった。
パエルモ伯爵が落ち着いていられた大きな要因はアキラの存在なのだが、それはほとんど知られていない。
そしてコーラル商会もパエルモの安全を信じ、平常運転をしていた。やはりアキラの存在は大きかった。
そして、リズムリア王国の勝利が伝えられると街中は活気に満ちた。
そして、再びパエルモ伯爵の屋敷を訪問。
パエルモ
「褒美の希望は決まったか?」
僕
「はい。
土地をいただけませんか?」
パエルモ
「よかろう。
場所に希望はあるのか?」
僕
「地図をお借り出来ますか?」
パエルモ
「うむ。」
執事のザバスさんが地図を広げる。
僕は街から離れて、街道からも少し離れたへんぴな場所を指す。
僕
「この辺りが希望です。」
パエルモ
「ん?
何もない場所だぞ?」
僕
「だからです。
人里離れた場所で実験的な農業をしてみようかと思ってます。」
パエルモ
「実験的な農業とはなんだ?」
僕
「季節外れの作物の栽培です。
うまくいくかはわかれませんし、成功してもかなり割高にはなると思いますが。」
パエルモ
「面白そうだな。
よし、土地は用意しよう。
成功すれば私にも教えてくれ。」
僕
「ありがとうございます。
成功したら、ご報告致します。」
パエルモ
「土地はいいとして、人手は確保出来ているのか?」
僕
「それもこれからです。」
パエルモ
「なら、セージ伯爵に相談してみるといい。今なら大量の戦争奴隷を抱えているはずだ。良い人材を斡旋してくれると思うぞ。」
僕
「なるほど。
お教え頂き、ありがとうございます。
今度相談してみます。」
やったね。
土地は手に入ったし、人手もなんとかなりそうだ。後は僕の思いつきが成功するかどうかだね。
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