リンとゲコ

リンとゲコはバレティアに到着するとセージを探して移動する。

ゲコは前回セージに会った際はまだ仲間になっていなかったため、リンが頼りだ。


バレティアは大きな外壁に守られた要塞のような都市だ。

このバレティアの統治と第2騎士団の団長を兼ねているのがセージだ。


領主の屋敷っぽい大きな屋敷があったので、こっそり気配を消して入る。

いくつかの部屋を探すと大きな会議室で打合せをしているセージを見つけた。


会議の内容や参加者には興味はない。

気配を消すのをやめて、姿を現す。


いきなり現れた2体のモンスターに会議室は騒然となる。

騎士たちが一斉に駆け寄る。


リン

『セージ様に手紙です。

お読みください。』


リンにとってはセージはマスターであるアキラの知り合い程度の認識である。

貴族とか騎士団とかに興味はまったくない。


セージ

「私にか。

わかった。いただこう。」


騎士

「よろしいのですか?」


セージ

「かまわん。

ここまで誰にも気付かれずに侵入してきたモンスターだ。攻撃の意思があればとっくに攻撃してきているだろう。」


セージはリンの前まで行き、手紙を受け取った。


『セージ様

お久しぶりです。パエルモのアキラです。

パエルモ伯爵よりドバン帝国軍進攻の話を伺いました。

モンスターを派遣します。

独自に妨害工作をさせます。

巻き込まれないようにご注意ください。

それと、基本的に僕は戦争とかには関わりたくないので、僕の関与は内密にして頂きたいです。

宜しくお願い致します。』


セージ

「目を通したぞ。

協力に感謝する。」


リン

『ばいば~い。』


リンとゲコの姿が消えてなくなる。


騎士

「団長、今のは?」


セージ

「援軍だ。独自に後方で撹乱をしてくれるようだ。有難い。」


騎士

「あの2体だけですか?」


セージ

「わからん。

だが、厳戒態勢のここまで、誰にも覚られずに侵入してきたのだ。

相当の実力を持っているだろうな。」


騎士

「いかが致しましょうか?」


セージ

「我々のやることは変わらん。

バレティアを死守するのみだ。」




バレティアを出たリンとゲコ。

ドバン帝国軍の野営地に忍び込んだ。

当然、気配は消している。


ゲコ

『仙術 カエルの歌』


ゲロゲロゲロ~~~


ゲコの歌が広がる。

眠っていた兵士が続々と起き始める。

起きた兵士たちが武器を手に取り、暴れだす。


兵士

「何が起きているんだ!?」


兵士

「やめろ!!」


『仙術 カエルの歌』

広範囲の混乱攻撃。

歌を聴いた者が確率で混乱してしまう。

成功確率は使用者の魔力と対象の魔法抵抗力の差が影響する。

しかも歌なので、防御も出来ないし、範囲も広い。


ドバン帝国の野営地で混乱が広がっていく。

混乱した兵士を鎮圧しようと兵士たちが攻撃する。

しかし、さっきまで正常だった兵士が急に混乱し始める。

誰が、いつ混乱するかわからない恐怖。


兵士たちの間に恐怖と不安が広がっていく。


更に恐ろしい出来事が起きた。

死んだ兵士が甦ったのだ。

いや、正確に言えば、甦ってはいない。

不死者となって立ち上がったのだ。

そして生きている人間を襲いだした。


リンのスキル『不死の軍勢』だ。

スキルの有効範囲内で死んだ者はアンデッドとなり、リンの支配下に置かれる。


ドバン帝国軍の混乱はどんどん広がっていく。夜の闇の中、同士討ちの音だけが響いていく。


帝国軍の指揮官は困惑していた。

バレティアに近付いているので、夜襲は警戒していた。しかし、想定していた夜襲とはまったく異なる状況だった。

兵士が次々に混乱して暴れだす。

死んだ兵士がアンデッドになって襲ってくる。

原因不明。

対策不能。


帝国軍の指揮官に選ばれる男だ。

無能ではない。

だが、状況が異常過ぎた。

どんどん状況は悪化していく。

考える時間もない。


指揮官

「兵を動かすぞ!

一度この場を離れる!

隊列は気にするな!

とにかく走れ!

昨日の野営地を目指せ!」


もう指揮が取れる状態ではない。

なるべく多くの兵士を生きてこの場から離れさせるしかない。

そう判断して、即座に行動に移した。


その判断は正しかった。

リンもゲコも追撃をする気はない。

2人はただの妨害工作程度にしか考えていないからだ。

全滅させよう、とかは微塵も考えていない。



結果、

ドバン帝国軍は夜通し退却し、大きな損害を出しつつもリンとゲコから逃走することに成功した。

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