ビッグニュース
収穫祭を終えて数日後。
店にイリーナさんがやって来た。
僕
「どうしたんですか?」
イリーナ
「ちょっと報告したいことがあって。」
僕
「どうぞどうぞ。」
イリーナさんの後ろに男性がついて来ている。とりあえず座ってもらってお茶を出す。
イリーナ
「急にごめんなさいね。
実は報告したいことって言うのはね。
私、結婚することになりました。」
僕
「おぉっ!!
おめでとうございます!
お相手はそちらの?」
イリーナ
「ええ、
家具職人のヒメレスです。」
ヒメレス
「ヒメレスと申します。
宜しくお願い致します。」
緊張して、少し早口になるヒメレスさん。
いつも堂々としているイリーナさんとは対照的だ。
イリーナ
「ごめんなさいね。
腕は確かなんだけど、口べたで。
緊張しているみたい。」
僕
「僕も初対面の相手と話すのは苦手だから、よくわかります。」
マユラ
「結婚式とかはするの?」
イリーナ
「来月に簡単な式をして、お披露目会を開く予定なの。
満腹亭のみんなにも参加してほしいんだけど、どうかな?」
僕
「もちろん。
喜んで参加します!
お披露目会の料理も僕らに任せてよ。」
イリーナ
「有難いけど、さすがに支払いが出来ないわ。満腹亭の料理をみんなに食べてもらうのはお金がかかり過ぎるからね。」
僕
「じゃあ、お祝いとして料理を贈らせてもらいますよ。イリーナさんにはお世話になっているからね。」
イリーナ
「本当にいいの?」
僕
「もちろん。
僕らからの気持ちです。」
イリーナ
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ。」
アリエッタ
「イリーナは仕事を続けるの?」
イリーナ
「そのつもりよ。
さすがに妊娠、出産となると休ませてもらうけど、会頭からは出産しても落ち着いたら戻ってきてもいい、とは言って頂いているわ。」
マユラ
「良かったじゃない。
コーラル商会の給料なら安くないでしょ。」
イリーナ
「まあね。
でも妊娠とかはいつになるかわからないし、その後の体調もあるから、思い通りになるとは限らないわ。」
ヒメレスさんはけっこう無口なタイプっぽい。さっきから全然しゃべってない。
アイラ
「ヒメレスはもう職人として独り立ちしているのか?」
イリーナ
「ええ、
無口で少し頼りないけど、
職人としての仕事はしっかりしているし、すごく丁寧よ。
実は満腹亭の机と椅子も彼の作品なの。」
マユラ
「そうだったんだ。
さすがイリーナ。
ちゃっかりしてるね。」
ルーシュ
「ガタガタしないし、使いやすいです。」
ヒメレスさんは少しだけ嬉しそうにしている。作った物を誉められるのは嬉しいよね。
僕
「そう言えば、イリーナさんの知り合いで布を作ったり、服を作ったり出来る職人さんはいませんか?」
イリーナ
「ヒメレスのお母様とお姉様が服飾系の仕事をされているわ。
何かあったの?」
僕
「イリーナさんから売却禁止されている糸とか布が増えてきたからさ、家で着るパジャマでも作ってもらえないかな~、と思って。」
イリーナ
「目的はわかりました。
ヒメレス、アキラ君にお母様とお姉様を紹介してもいいかしら?」
ヒメレス
「ああ。
仕事をもらえるなら有難い話だと思う。」
イリーナ
「じゃあ、今度時間を作りましょ。
採寸する必要があるから、パジャマを作りたい人は全員来て。」
僕
「全員分作りたいから、みんなで行くよ。」
イリーナ
「わかりました。
それと依頼料だけど、相場より高く設定させてもらうわね。
かなり特殊な仕事を頼むことになるから、その分割増になるわ。
いいかしら?」
僕
「問題ないですよ。」
これで最高のパジャマが手に入る。
楽しみだな。
それとイリーナさんの結婚式のお料理も考えないとね。知り合いがほとんどだから自重する必要もないよね。
結婚式に華を添える料理にしたいな。
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