最終防衛線
翌朝。
マヘリアさんたちと別れて、砦を目指した。
デジーマ東部の平原に作られた砦。
見張り塔を即席で砦に改築したらしい。
レッズの侵攻に備え、デジーマの騎士団と義勇兵が入っている。
砦に到着しての第一印象はボロいな~。
小高い丘に立つ塔を中心に即席で塀や堀を作っている。すべて素人の突貫工事だ。
本物の城塞と比べるとチープ。
それでも一生懸命に工事を続けている。
砦に近づくと、見張りが声をかけてきた。
見張り
「何者だ。」
僕
「志願兵です。」
見張り
「・・・わかった。ついて来てくれ。」
あ、案外簡単に受け入れてくれた。
もっと問答があるのかな~、って覚悟してたんだけど。
中央の見張り塔に通された。
ちゃんとした装備の騎士がいた。
騎士
「君が志願兵かね?」
僕
「はい。そうです。」
騎士
「志願する真意を聞かせてくれ。
モンスターを何体も連れた冒険者がいきなり砦に志願してくる。
勘繰るのも当然だろ。」
僕
「僕はリズムリア王国の商人です。
冒険者ではありません。
デジーマからの交易品がリズムリア王国に届かないと困るので、手伝いにきました。」
騎士
「正気か?
商人がそんな理由で志願するなど聞いたことがないぞ。」
僕
「正気ですよ。
それに、うちの従魔たちは強いです。
6体いますけど、みんなAランクの冒険者と同等の実力です。
頼りになりますよ。」
謎の男
「頼もしいではないか。
Aランク冒険者6名が加入すれば、かなりの戦力増強になる。」
騎士
「閣下、
この男を用いるということでしょうか。」
ホンダ
「その通りだ。
少年、名は?」
僕
「リズムリア王国の商人、アキラと申します。」
ホンダ
「デジーマの領主をしているホンダだ。
交易品が望みとのことだが、何が欲しい?」
僕
「私は食堂を経営していますので、
食品、特にアカツキ特有の調味料がベルフォームに届かないと困るんです。」
ホンダ
「味噌や醤油か?」
僕
「おっしゃる通りです。」
ホンダ
「ハッハッハッ、面白い。
気に入ったぞ。
この戦いに勝てば最高級品を作っている製造者を紹介してやろう。
是非、リズムリア王国でアカツキ料理を広めてくれ。」
僕
「ありがとうございます。」
ホンダ
「イイジマよ。
アキラの面倒を見てやれ。」
イイジマ
「はっ!」
ホンダさんは去っていった。
イイジマ
「公爵閣下に気に入られるとは幸運だな。」
僕
「ありがとうございます。」
イイジマ
「まぁ、褒美を頂くにも、まずは勝たないとな。一般の志願兵は堀と塀の整備に従事してもらっている。戦闘が始まれば塔周辺の防衛にあたってもらう。」
僕
「今作っている堀とか塀のあたりでは戦わないんですか?」
イイジマ
「当然戦うよ。
しかし、それは我々の役目だ。
戦闘に慣れていない志願兵たちには後方支援をお願いしているんだよ。」
う~ん
意外と人道的。
てっきり弱い志願兵は捨て駒にするのかと思ったら、戦闘が始まるまでの労働力って扱いだった。
僕も他の志願兵と一緒に堀を掘った。
夕方には炊き出しがあった。
1日2食。
街に近いので食糧の問題はなく、潤沢にあるらしい。
ただ手間はかけられないので、パンと具沢山スープだ。イメージはとん汁かな。
そして、レッズがオワッリを出たとの情報が入ってきた。
開戦見込みは明日の昼頃。
砦では、明日の朝から臨戦態勢に入ることになった。
初めての大規模戦闘。
不安な夜は更けていった。
翌朝から、更に緊迫した空気が流れていた。
志願兵たちも昨日までの堀や塀を作るための道具から、武器に持ち替えている。
武器も持たずに志願した者は丁度いいサイズの石を集めて投石の準備をしている。
僕もいつ戦闘が始まってもいいように準備をしている。モンスターたちも周囲の空気を感じて、ピリピリしている。
出来れば、僕の出番なく終わってほしい。
でもヒロユキという男次第かな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます