パエルモ騎士団

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今回は別人の話です。

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パエルモ騎士団団長 ヒース


厄介なことになった、、、

コーラル商会の護衛の話を信じれば、レベル50相当の実力を持った野盗とその取り巻き15~20人。

レベルが高過ぎる。

団長の私でもレベル30だ。

おそらく多少の人数を用意しても倒せないだろう。バレティアなどのレベルを上げやすい環境と異なり、パエルモ騎士団はレベルが高くない。


しかし、既に商人達からは野盗討伐の嘆願書が出されている。このパエルモを支えているのは農業と交易だ。

野盗の存在が明らかになっているのに討伐が遅れれば、市民の不満が爆発するだろう。

それはパエルモ伯爵の不興を買うことになる。早々に対応せねばならない。


今回の野盗の動きを見る限り、稚拙な印象を受ける。交渉もろくにせずに襲いかかり、結局負傷者を出して退却している。

腕は立つが行き当たりばったり。

そんな印象だ。

ならば正面から戦うのは愚策だろう。

こちらはずる賢く立ち回ればいい。



騎士団は30人ほどの編成で野盗の討伐に出兵した。本来であれば十分な戦力だ。

しかし、今回ばかりは正面から戦えば苦戦を強いられるだろう。


ヒースは斥候を増やした。

部下達には、

「おそらく野盗どもはこちらの動向を探りにくる。そこを捕まえろ。

やつらは素人だ。難しくないはずだ。

あくまでも身柄の確保が目的だ。

丁重に扱え、捕まえた後にこちらの駒として使う。間違っても殺すなよ。」


本隊の周辺に兵を伏せ、様子を見に来た野盗を捕らえる。それが作戦の肝だ。それを失敗すると面倒になる。

なんとしても成功させたい。


野盗の探索を始めたその日の夜に早速2人組を捕まえた。

部下に捕らえられ、怯える野盗。


ヒース

「そう心配しなくてもよい。

食うに困って野盗になったんだろ?」


野盗

「は、はい。」


ヒース

「私も貧しい農村の出身だ。

気持ちはよくわかる。」


野盗

「あ、ありがとうございます。」


ヒース

「伯爵様には私からとりなそう。

悪いようにせん。」


野盗

「ありがとうございます。

ご恩は一生忘れません。」


ヒース

「ただ、野盗をやったという罪は大きい。

手柄を立てないと伯爵様も恩赦を与えられないだろう。手柄を立ててみないか?」


野盗

「手柄、、、」


ヒース

「簡単なことだ。これを明日の夕食に混ぜればいい。睡眠薬だ。他の野盗を捕まえるのに協力してくれればいい。

そうすれば、今後の生活は保証される。」


翌日の夜。

野盗の野営地に行くと起きていたのは4人。

他は眠っていた。

眠っている間に全員を拘束していく。

問題の2人には奴隷の腕輪を右腕にはめる。

これで野盗討伐を終了だ。


ヒース

「ご苦労だった。

こちらの4人を我々の野営地にお連れしろ。疲れているだろうから、丁重にな。

あ、そうだ。

これは私からだ。」


そう言って酒瓶を渡す。


野盗4人

「「「「ありがとうございます。」」」」


野盗4人が去った後、


ヒース

「問題の2人を除いて、皆殺しにしろ。」


眠り、縛られた野盗を殺すことなど容易だった。後片付けを終え、眠る2人だけを連れて野営地に戻ると4人の野盗が眠りについていた。疲れたところに酒を飲んだのだ。当然だろう。


ヒース

「殺せ。」


翌日。

パエルモに戻る途中、2人が目を覚ました。


大野

「ここはどこだ!」


杉山

「何がどうなってるんだ?」


ヒース

「お前たちは仲間に売られたんだよ。

お前たちの仲間は今頃リズムリア王国を出て南のヘーデン王国にでも入っているだろう。

公式発表は野盗はすべて討伐となるがな。」


大野

「そんな、、、」


杉山

「俺たちはどうなるんだ?」


ヒース

「犯罪奴隷として扱われる。

安心しろ。

リズムリア王国はドバン帝国よりも奴隷の扱いは優しい。

特にお前たちは力があるからな。

犯罪奴隷の中でも優遇されるだろう。」


大野

「クソッ!」


杉山

「頼む!

助けてくれ!

もう奴隷は嫌なんだ!」


ヒース

「それなら犯罪奴隷として手柄をあげるんだな。解放までの期間が短縮されるぞ。

くれぐれも逃げようとはするなよ。

さすがに両手を切っては生活に支障が出るだろ。」


大野

「俺たちはどれぐらい奴隷をさせられるんだ?」


ヒース

「さあな。

残念ながら私の仕事はお前たちを捕まえるまでだ。そこから先はわからん。」


死ぬまでだよ。

その言葉は口にはせずに心にしまっておいた。山賊行為は重罪だ。その主犯格なら通常は死刑。それを奴隷として生かせるのだ。限りなく終身刑に近いと思った方がいいだろう。よほどの手柄をあげ、よほど伯爵に気に入られることがない限り、奴隷から解放されることはない。

淡い期待をしながら延々と働き続けるのだ。

捕まった野盗に未来などはない。

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