それぞれの事情

ハモンド

「それでは紹介をした順に説明して参りましょう。

まずはアリエッタ。

彼女はDランクの冒険者でした。

その特徴はなんと言ってもガンナーという職業でしょう。

ガンナーはその名の通り銃に特化した職業です。しかし、銃は貴重品。駆け出しの冒険者が手に入れることは出来ない。弓使いとして戦っていましたが、当然真価は発揮出来ない。

そんなある日、銃が手に入るという話が舞い込んできました。高価で借金が必要でしたがパーティーみんなで頑張れば返せる範囲だと思った。

そして大きな決断をして銃を手に入れた。

だが、それは粗悪品だった。

数度引き金を引いただけで暴発。

アリエッタは大怪我を負ってしまった。

大怪我をしたアリエッタが目覚めたら、商売道具の指は欠損。顔には大きな傷。おまけにパーティーメンバーは行方知れず。

残ったのは借金だけ。

というストーリーです。」


ハモンドさん、ストーリーテラーが上手過ぎるよ。


「ハモンドさん、説明が上手いですね。物語を聞いているようでしたよ。」


ハモンド

「ご静聴ありがとうございます。

お話した内容はだいたい合ってますよね?」


アリエッタ

「そうね。

暴発の影響で右手はダメだけど、左手は問題ないからね。冒険者時代もサブウェポンにショートソードを使ってたから、戦力にはなれるよ。」


ハモンド

「かなりお買い得だと思いますよ。

是非、ご検討くださいませ。

さて、次のルーシュさんも説明致しますね。

ルーシュさんは名前は出せませんが、貴族の生まれです。マナー等も学んでいますので接客などにもってこいです。

ただ2点、マイナス点がございます。

1つ目は軽い方ですが、赤魔道士だということです。」


「えっ?

魔道士系って人気じゃないんですか?」


ハモンド

「魔道士系が人気、というのは合っております。ですが赤魔道士はちょっと別です。

良く言えばオールラウンドプレイヤー。

悪く言うと中途半端な器用貧乏。

個人的にはそこまで悪くないと思うんですがね~。」


「もう少し細かく教えてください。」


ハモンド

「失礼しました。

赤魔道士は攻撃魔法も回復魔法も使えます。

但し、レベルアップ時の期待値が4と低く、しかも偏りなく上昇します。

そのため、通常の魔道士はレベルアップの度に1上昇するのに、赤魔道士はその半分しか上がりません。結果、評価が低くなっているようです。

まぁ、私は戦闘をしませんのであまりピンときませんがね。」


「使い方次第な気がするんだけどな~。

で、もう1つのマイナスポイントはなんですか?」


ハモンド

「それはですね。

呪われているんです。

しかも本人ではなく周囲の人間に害悪を為すタイプの呪いです。」


呪いか~。

この世界の呪いは元の世界の抽象的なものではない。魔法のある世界だ。呪いもある。

ただし、珍しい。呪術は魔法と異なり、あまり広く行われているものではない。


「解呪は出来ないんですか?」


ハモンド

「大丈夫です。

可能です。

可能なんですが、相当強い呪いらしく、街の教会レベルでは不可能なもののようです。かなり上位の聖職者でないと解呪は出来ないようです。そうすると手間とお金が大量に必要になります。

残念ながら彼女の販売金額では穴埋め出来ないでしょうね。冷たいようですが私も商売ですので損は出来ません。」


「僕はハモンドさんのそういうところ、嫌いじゃないですよ。綺麗事ばかり言うよりも信頼出来ます。」


ハモンド

「ありがとうございます。

まぁ、以上の理由で2人は格安になっております。

ルーシュさん、何かありますか?」


ルーシュ

「私に、、、関わらないで、、、

私は死にたいの、、、」


ハモンド

「まあまあ、落ち着いてください。

なかなか厄介な呪いでしてね。

簡単には自殺も出来ないんですよ。

彼女が食事を取らないと周囲の人間が栄養失調で倒れるし。」


後半かなり実感こもってたな。

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