パエルモ伯爵

パエルモの街に住んで長い。

当然領主様の屋敷の場所も知っている。

街の中心にある大きな建物だ。

中に入るのは初めてだけど。


いつも門には門番がいる。

でも、この馬車はスルッと入っていく。

大きくパエルモ伯爵の紋章が書かれているからね。


中に入ると衛兵に持ち物チェックされる。

短刀とマジックバックは回収されました。

どうしよう?

短刀を見せられないぞ。


ザバスさんについて歩く。

衛兵も2人ついて来る。

案内されたのは執務室だった。


コンコンコン

ザバス

「『満腹亭』の店主を連れて参りました。」


「入れ。」


ザバス

「失礼します。」


中にいたのはパエルモ伯爵だろう。

40歳ぐらいのおじさんだ。

当然、身なりは良い。


パエルモ

「突然呼び立ててすまない。

名は?」


「あ、え、、、

『満腹亭』の店主の、、

アキラと申します。」


パエルモ

「アキラか。

今日は折り入って頼みがあってな。」


なんだろう?


パエルモ

「『満腹亭』は新しい店だが美味しく、珍しいものも食べられると評判のようだな。」


「え、あ、その、はい。

あっ、ありがとうございます。」


パエルモ

「来週末。

長男のジョシュアの15歳の誕生日を祝うパーティーを行う予定なのだ。

そこで評判の『満腹亭』にも料理を提供してもらおうと思ったのだ。」


なんだ、仕事の依頼か。

パーティーの料理か~。

どうせ拒否は出来ないんだろうから、ちゃんと話を聞こう。


「どのような料理を希望されますか?」


パエルモ

「周辺の貴族を呼んでの立食パーティーだ。見栄えが良く、

珍しさがあればなお良い。

当然、美味しい料理だ。

予算は後ほどザバスから提示させる。

うちの料理人にも十分な料理は用意させている。目玉になる料理なら言うことはない。」


う~ん。

立食パーティーなんて参加したことないからね。


「パーティーにうちの料理人を立たせることは可能ですか?

目の前で完成させるような。」


パエルモ

「可能だ。

その場で料理人が切り分けたり、盛り付けたりするのはよくあることだ。」


「わかりました。

参加される人数などは後ほどお教え頂けますか?」


パエルモ

「問題ない。」


「わかりました。

精一杯用意致します。」


パエルモ

「期待しているぞ。

ところで、持ち物に第2騎士団の紋章が入った短刀があったようだが、あれはなんだ?」


どうしよう?

どう説明しよう?

嘘はまずいよね。


「私の連れている従魔をセージ様が気に入って頂き、困った時は見せるようにと言ってくださいました。」


パエルモ

「なるほどな、、、

あのセージがそこまで気に入るとは、余程の従魔なんだろうな。

今度、私にも見せてくれ。」


「承知しました。

今度のパーティーに連れていきましょうか?」


パエルモ

「よろしく頼む。」



僕は部屋を出て、ザバスさんからパーティーの参加人数や予算などの必要な情報を渡された。

店に帰って相談だ。



『満腹亭』に戻って経緯をみんなに説明した。


マユラ

「パエルモ伯爵のパーティーで料理を提供するんでしょ。光栄なことだよね。」


「リィズとフィオのおかげだよ。」


リィズ

「そんな~。」


フィオ

「でも、どんな料理を作ったらいいんでしょうか?」


「貴族の立食パーティーってどんな感じかな?何か気をつけることとかあるのかな?」


マユラ

「このメンバーに聞いても誰も知らないんじゃない。貴族様のパーティーに呼ばれるようなことはないからね。」


アイラ

「確かにな。

デラーノ氏に質問するしかないだろうな。

高級店のオーナーシェフだ。

そういう経験もあるだろう。」


「じゃあ、明日の夜はデラーノさんのお店で食べよう。その時に質問してみよう。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る