禁術

「えっと、、、

なんか、ごめんなさい。

やりなおしましょうか?」


『一度勝った相手に、

 再度試練を与えることは出来ない。

 なんたる屈辱。

 なんたる無念。』


やっぱり叱られる。


「じゃあ、

何もなかったことにして、

帰りましょうか?」


『与えねばならぬ。

 これは古よりの約定。

 例外は認められない。

 どれだけ不本意であっても!

 どれだけ不適切であっても!』


何を言ってもダメらしい。

さっさと貰うもの貰って立ち去った方が良さそうだ。


「ダンジョンをクリアしたら、何か貰えるんですよね。何が貰えるんですか?」


『何故このような男に!

 納得出来ない!

 禁術に相応しくない!

 魔法の深淵。

 使えるはずがないのに。

 究極の魔法。

 魔法を使わぬ者に与えるなんて!』


う~ん。

たぶん、凄い魔法が貰えるらしい。

でも僕が骸骨を魔法を使わず倒したのが気に入らないらしい。

それなら最初から魔法を使ってね、とか言ってほしいよ。

親切さが足りないと思う。


「受け取ったら、すぐに立ち去りますので、ください。」


『与えよう、身の丈に合わぬ力を。

 与えよう、分不相応な力を。

 あぁ、なんという不条理。

 あぁ、なんという屈辱。』


そんなことを聞かされながらも、力が流れ込む。

スキル『禁術』が手に入った。


『さぁ、うせよ。

 さぁ、立ち去れ。

 さぁ、もう用はないはずだ。

 さぁ、二度と来るな。

 さぁ、さぁ、さぁ。』


圧が凄い。

とりあえずダンジョンを出よう。


ダンジョンを出て、

そして、落ち着いてからスキルをチェックする。


『禁術』

スキルレベルの設定は無い。

使える魔法は6つ。

・虚無  単体攻撃魔法

・地獄門  広範囲攻撃魔法

・神滅  極限攻撃魔法

・拒絶壁  結界魔法

・事象否定  回復魔法

・万華鏡  分身魔法

・夢幻行  移動魔法


なんか名前がものものしい。

試し打ちするのも気が引ける。

そもそも『禁術』って名前もヤバそうだもんね。

とりあえず89階のボスで試してみよう。


と言うことで89階に入る。

ボスは『猛将 夏将軍』。

名前はふざけているけど、炎と剣で激しい攻撃をしてくるボスだ。


まずは拒絶壁。

結界魔法だ。

夏将軍の攻撃を完全シャットアウト。

・・・でも、いつもの結界でも防げるから、効果がわかりにくい。


次に万華鏡。

分身魔法だ。

びっくりするぐらいMPを持っていかれる。

でも、効果は凄かった。

僕がもう1人現れた。

スキルは同じ。

ステータスは10分の1。僕の場合、10分の1でもステータスは十分高い。

しかも、自分である程度考えて行動が出来る。

ただし、存在するだけで分身は徐々にMPを消費していく。これがゼロになれば消滅する。もちろんHPがゼロになっても消滅だ。

僕の場合、自動MP回復のスキルがあるので簡単には減らない。

かなり長期間活躍出来る。

チート級の魔法だ。


ダメージは無いので回復魔法は使う意味が無い。

次は攻撃魔法にしよう。

地獄門と神滅は名前がヤバそうなのでまだマシな虚無にする。


・・・一撃でした。

虚無を発動した瞬間。

漆黒の弾丸が撃ち出され、着弾点を中心にすべてを無に帰す。

夏将軍の体にきれいに穴が空いた。

これはヤバい。

威力が非常識だ。

断面が非常に美しい。

圧倒的な破壊力。


他の魔法を試すのは止めておこう。

嫌な予感しかしない。

結局、夕方までは89階から順番にボスを倒していった。

ボスの宝箱はテンションが上がるからね。



夕方、宿屋に戻るとリィズとフィオが戻っていた。


リィズ

「順調に攻略出来ましたか?」


「100階に到達出来たよ。

新しいスキルを貰ったんだ。」


フィオ

「どんなスキルなんですか?」


「『禁術』って名前でさ、

効果は抜群だよ。

特に分身を作り出す魔法は凄いよ。」


リィズ

「アキラ様がもう1人増えるんですか?」


「そうそう。

多少制約はあるけど便利だよ。

他の魔法は強力過ぎて使いどころに困る感じ。」


フィオ

「まあ、強力な魔法に頼るような場面は無い方がいいですからね。」


「そうだね。

安全第一でいこう。

そっちはどうだった?」


リィズ

「ここはパエルモから近いですからね。

そこまで目新しいものはなかったです。」


フィオ

「ただ、いくつかの生の香草が手に入りました。パエルモに流れてくるのは乾燥したものなので、香りがフレッシュですよ。」


「いっぱい買えた?」


リィズ

「在庫全部買ったので、店の方が驚いてました。」


でしょうね。

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