騎士団
僕
「どうして彼をマークしたの?」
スタイナー
「冒険者『黄金の杯』が不正をしていると騒いでいた。不正を疑われるような力を持っているなら異世界人の可能性があると考えた。」
あいつらのせいか。
でも、どうしよう?
とりあえず騎士が任務として動いているなら殺したりしたらダメだよね。
とりあえず眠らせて部屋を出よう。
魅了中の記憶はないはずだ。
明日の朝、アイラさんに相談しよう。
元ドバン帝国の軍人だから、たぶん僕の周辺だと一番詳しいと思う。
そして、翌朝。
マユラさんは二日酔いでひどい顔をしていた。
朝食はトーストとベーコン、野菜たっぷりクラムチャウダー。
とりあえず、マユラさんに治癒魔法をかける。
マユラ
「ありがと~。
昨日は飲み過ぎたわ。」
マユラさんが少し元気になった。
僕
「アイラさん、実は相談があって、、、」
僕は昨日の夜の出来事を報告する。
アイラ
「なるほど。
第2騎士団所属の騎士か、、、
厄介だな。」
僕
「僕の対応はあれで良かったのかな?」
アイラ
「ああ。
問題無い。
おそらく、既にアキラのことは報告されている。その最中に騎士が死亡するようなことがあれば真っ先に疑われるだろう。」
僕
「今後はどうしよう?」
アイラ
「基本的には静観するしかないな。
アキラの場合、連れているモンスターの数と質が異常だ。隠しようがない。
異世界人との疑いは強まるだけだろう。
ただ、ガロッソ氏には相談しておいた方がいいだろうな。彼は貴族ともつながりがあるようだ。
貴族の後ろ楯があれば騎士団も不用意なことは出来ないだろう。」
さすがアイラさん。
僕
「ありがとう。
後でコーラル商会に行ってみるよ。」
マユラ
「でもさ~、
なんで第2騎士団は異世界人を探してたんだろうね。」
アイラ
「即戦力の獲得だろうな。
リズムリア王国の騎士団の中で、バレティアの街に駐在し最前線を守るのが第2騎士団だ。精鋭揃いと評判だ。」
僕
「騎士団って何個もあるの?」
アイラ
「リズムリア王国の場合、公になっているのは3つだ。
第1騎士団は王都及び周辺の治安維持。
人数は最も多い。
第2騎士団はバレティアに駐在し、対ドバン帝国の要となっている。
第3騎士団はお飾りだ。貴族の二男、三男等の跡継ぎではない男子の受皿だ。」
第3騎士団ってひどい言われ方だな。
でも事実なんだろうね。
僕
「じゃあ、その第2騎士団にスカウトしようとしているってことかな?」
アイラ
「おそらく。
だが騎士団の団長は貴族でもある。
ただの商人であるアキラに拒否権はないぞ。」
僕
「そんな~。」
アイラ
「そのためにガロッソ氏に相談するんだ。」
僕
「そ、そうか、そうだよね。
ガロッソさんならなんとかしてくれるはずだよね。」
朝食を終え、みんなが『満腹亭』の開店準備をしている中、僕はコーラル商会に出かけた。
コーラル商会にいたのはトマーシュさんだった。
トマーシュ
「あれ、アキラくん、どうしたんだい?」
僕
「実は、、、」
トマーシュさんに事情を説明する。
トマーシュ
「なるほど、、、
厄介な状況だね。
会頭は今出掛けていてね。
夜には戻ると思うけど。
でも会頭でも難しいかもしれないな。」
僕
「えっ!?
どうしてですか?」
トマーシュ
「会頭が頼るとなれば、おそらくパエルモ伯爵になると思うんだけど、
パエルモ伯爵に第2騎士団のセージ団長の要求をはね除けて頂けるだけのメリットを提示しなければならないだけど、
それがなかなかハードルが高いな。」
僕
「お金なら多少はあるけど、、、」
トマーシュ
「単純にお金で解決しようとすると難しいんだよ。バレティアに強い戦士を勧誘することは国益になるからね。
それを否定させるだけのものがないと。」
僕
「そうか~。
難しいのか~。」
トマーシュ
「だけど、セージ団長は頭のキレる方だと評判だ。そんな方がアキラくんと敵対するようなことはしないと思うよ。」
僕
「どうしてですか?」
トマーシュ
「バニングさんに聞く限り、アキラくんたちはとても強いんだろ。
取り込もうとはしても、押さえつけることは出来ないと理解出来ると思うんだ。
だから、まずはアキラくんの力を示しながら、じっくり交渉すれば良いと思うよ。
くれぐれも短慮で暴力に頼るようなことはダメだよ。国の敵になっちゃうからね。」
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