専属農家
お店は大にぎわいです。
連日満席。
イリーナさんからは、
「当然の結果です。
この味でこの価格は反則です。
普通なら最低でも30ウォンカはしますよ。」
それに一部の冒険者からは、
「『翼竜の一刺』のディオンさんがオススメとおっしゃってました。」
という声も聞かれた。
本当に感謝!
冒険者たちからはC定食が人気だ。
やっぱりボリュームは大事だね。
冒険者関係でいくと、ギルドの事務員さんたちもよく来てくれる。サブマスターのロイズさんが宣伝してくれているみたい。
みんな有難いね。
連日満員。
お店は週休1日制。
休みの日は自由に過ごしている。
ちゃんと給料を渡しているので、みんなそれで思い思いに過ごしている。
ちなみに、ガウとドラは平日は暇なのでガウがマジックバックを背負って出かけ、狩りを楽しんでいる。魔石は持ち帰り山分けしている。
そんな時、休日にコーラル商会を訪れると少しモメていた。
僕
「どうしたんですか?」
トマーシュさんがいたので声をかけた。
トマーシュ
「ちょっと雇ってほしいっていう売り込みでね。先日のフレイムアントに家と畑を焼かれたみたいなんだよ。」
僕
「どうして、それで売り込みになるんですか?」
トマーシュ
「農村ではモンスター被害や不作で、税金が払えなくなったり生活費が失くなった時に子どもを働きに出すことはよくあることなんです。
ですが今回は少し違って、、、」
僕
「どう違うんですか?」
トマーシュ
「家族全員を雇ってほしい、
と言ってきているんです。
かなり珍しいケースですね。」
僕
「そんなに珍しいんですか?」
トマーシュ
「珍しいですね。
子どもを働きに出して、その手付金で翌年の収穫までしのぐのが普通です。
それを子どもと別れたくないからと農業を諦めて、働き口を探しに来るのはかなりイレギュラーですよ。」
僕としては好感が持てるな。
子どもを売るのが普通と言われてもしっくりこない。子どもと一緒に暮らすことを最優先するって感覚の方が理解出来る。
僕
「でも、どうしてモメているんですか?」
トマーシュ
「子どもの方が適応力が高いからね。
大人になる頃には優秀な商人になる可能性がありますが、大人は難しいですからね。
しかも一気に4人は余計に難しいですね。」
うーん。
何か力になってあげたいな。
僕
「ちょっとだけ話を聞かせてもらってもいいですか?」
トマーシュ
「それは構わないけど。」
部屋に通してもらうと、
ガロッソさんにおじさんが頭を下げていた。
ガロッソ
「さすがに4人全員は厳しいな。」
おじさん
「給金は安くてもいいんです。
子どもが大きくなるまで一緒に働かせてもらえませんか。
なんでも頑張ります!」
ガロッソ
「すまんな。
うちも商売なんだ。
損になりかねん契約は出来ん。」
おじさん
「多くは望みません。
子どもたちと一緒に暮らしたいだけなんです。」
ガロッソ
「う~ん。」
僕
「ちょっといいですか。」
ガロッソ
「アキラか、どうした?」
僕
「そちらの方、農家なんですよね。」
ガロッソ
「そうだ。
ウィリアムさんだ。
フレイムアントに家も畑も焼かれて、うちで家族全員で働かせてほしいと言ってきてな。
ちょっと困ってたところだ。」
僕
「ウィリアムさん。
僕のお店用にお野菜を作ってもらえませんか。」
ウィリアム
「どういうことですか?」
僕
「僕は飲食店をやってるんですよ。
そこに品質の良い野菜を納めてほしいんです。もし協力してくれるなら、お金を貸しますよ。」
ウィリアム
「詳しく聞かせてください!」
ガロッソ
「なるほどな。
確かに悪くない話だ。
よしイリーナ!
ちょっと来てくれ。」
イリーナさんが部屋に入ってきた。
ガロッソ
「アキラが専属農家にしたいらしい。
契約を調整してやってくれ。」
イリーナ
「わかりました。
では、双方の希望をお聞かせください。」
僕
「どうせなら美味しい野菜が欲しいな。
美味しい野菜を供給してくれるなら、多少お金を使っても問題ないよ。」
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