ガンズとメリル
ギガントアダマンタートルは再びマジックバックにしまい、メリルさんの部屋に移動した。
メリル
「ここから魔法紙に特殊効果を写し取ります。今から準備しますので、少しお待ちくださいね。」
メリルさんが机の上を整えていく。
机には魔方陣が描かれている。
その真ん中に紙が置かれている。
メリルさんがぶつぶつと何かを唱えながら手をかざすと魔方陣が輝きだした。
メリルさんは両手でギガントアダマンタートルの甲羅を魔方陣に置かれた紙の上に持ってくる。
徐々に甲羅も光に包まれていく。
光に包まれた甲羅から光の雫が、
ポトリ、ポトリ、
紙に落ちていく。
メリルさんの表情が徐々に苦しそうになっていく。甲羅から垂れる雫はまだ止まらない。
徐々に甲羅の輝きが薄れ、
次第に消えていく。
最後の一滴が紙に落ちる。
光を失った甲羅にいくつものヒビが入った。
甲羅を傍らに置き、メリルさんは紙に指を置く。
すると、魔方陣がまた違った輝きをみせる。
紙が強く輝く。
そして、次第に紙の輝きが弱まっていく。
メリル
「ふ~、どうにか成功しました。
強度上昇はそれほど難しい効果ではないはずでしたが、なかなかの難物でしたね。」
ガンズ
「よくやったぞ、メリル。
この魔法紙、
相当強い効果を持っているな。
ここからはワシの領分だ。
ミトン、相槌を頼めるか。」
ミトン
「えっ!?
私でいいんですか?」
ガンズ
「やるのか、やらんのか、どっちだ。」
ミトン
「やります!
やらせてください!
こんな大仕事、経験できるチャンスは滅多にありません!
すぐに準備します。」
ガンズ
「よし、ワシの部屋に行くぞ。」
ガンズさんの作業部屋は、これぞ鍛冶場という雰囲気だった。
炉に火を入れ、どんどん準備を進めていく。
忙しく動き回るミトンさん。
指示を出すガンズさん。
メリル
「アダマンタイトは非常に硬度が高く、加工が難しい金属です。
しかも付与の適性が低い為、あまり特殊効果の付与は行いません。
特殊効果の付与は製造時に行うのが一般的です。後から付与するのは一気に難易度が上がります。
今回の作業は大抵の鍛冶職人は手を出さない、難しい作業だとご理解ください。」
僕
「ガンズさんでも難しいんですか?」
メリルさんは小声で、
「本人は絶対大丈夫だと言うと思いますけど、成功率は6割ぐらいだと思います。
棟梁はフルトでも一二を争う腕なので、そこまで成功率が高くなっています。普通の職人なら間違いなく失敗しますよ。」
ガンズさんとミトンさんがメイスを火に入れて様子を見ている。
ガンズ
「焦るなよ。
焦ると失敗する。
だが、金属の声を聞き逃すなよ。
出すのが遅れれば、強度が低下する。」
ミトン
「はい!」
2人がじっと見守る。
・
・
・
ガンズ
「今だ!」
ガンズさんがメイスを引き出す。
そして、ガンズさんとミトンさんが交互にハンマーを振り下ろす。
カン!
カン!
カン!
ハンマーの音がリズミカルに鳴り響く。
何度も何度も叩き続ける。
そして魔法紙を巻きつけ、一気に水の中に入れる。
水の中から強い光が溢れ出す。
眩しい。
次第に光がおさまる。
僕
「完成?」
メリル
「ここから仕上げの作業があります。
でも一番の難関は突破した感じです。」
その後、ガンズさんとミトンさんでテキパキと作業をこなしていく。
なんか熟練の職人の動きってカッコいいよね。無駄がないと言うか、洗練されていると言うか、感覚が研ぎ澄まされていて、真剣な眼差し。
ずっと見ていられる。
しばらくすると、
ガンズ
「完成だ。
アキラ、持ってみろ。」
傷1つ無いメイス。
新品同様な輝き。
でも初めて受け取った時よりなんか、しっくりくる。
ガンズ
「強度上昇レベル8のスキルがついている。もはや別物と言えるぐらいの強度だ。元々硬いアダマンタイトに強度上昇レベル8を付けるなんざ、普通なら頭がおかしいって言われる武器だぞ。」
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