足手まとい
翼竜の一刺は強かった。
ディオンさんを含む前衛3人が抜群の安定感。3人の連携が乱れない。
複数体のフレイムアントが迫って来る。
接触する前に後列から弓矢が刺さり、数を減らす。そして乱れたところを確実に槍で貫く。
数が多い時は3人が並んで盾を構えて体当たりを行う。
フレイムアントを吹き飛ばし、フレイムアントがまとまったところに魔法使いが炎の塊を放ち一掃する。
フレイムアントは火属性の牙を持つ火耐性がある訳ではない。
フレイムアントの巣は迷路みたいになっていて、縦横斜めに通路が走っている。うっかりしていると四方から襲われてしまう。
しかし、ディオンさんたちは上手い。
不意討ちを受けにくい場所で戦うように調整して戦っている。
前と後ろだけ気にすればいいようにしてくれている。
一方、黄金の杯。
後ろから来るフレイムアントを倒すだけでいいはずなんだけどね。
やたらに時間がかかる。
戦い方が雑。
攻撃力は高そうだけど、それだけ。
基本的に蟻タイプのモンスターは表皮が硬い。圧倒的な攻撃力が無いなら、関節の隙間などを狙うのがコツだ。
でも黄金の杯はそれが出来ない。
そして、黄金の杯が遅れるから翼竜の一刺も待たされる。
待っている間にまたフレイムアントが現れる。
進行速度が上がらない。
最初にイライラを爆発させたのは黄金の杯だった。
ゲイル
「もっと、さっさと進めよ!
お前たちが遅いから戦闘が増えるんだよ!」
ディオン
「我々は進行速度を変えるつもりはない。
速く進みたければ、後方の安全を確保してくれ。」
ウィッツ
「俺たちがフロントを代わろうか?」
ロイズ
「いい加減にしなさい。
翼竜の一刺が素晴らしいポジショニングをしているから、安全に進めているんです。
遅れている原因はあなた方ですよ。」
ゲイル
「年寄り同士のかばい合いかよ。」
ディオン
「俺をリーダーにすると決めたはずだ。
指示には従ってもらう。」
ゲイル
「ちっ!」
不和をおこしつつも、徐々に進んでいく。
次に問題となったのは疲労。
巣の攻略は時間がかかっている。
僕とロイズさんは元気だよ。
でも常に前線を支えている翼竜の一刺にも疲労が溜まっている。ダメージはボゥが回復するけど、疲労は消えない。
僕
「ディオンさん、少しだけ前線を代わります。その間にこれを食べて、飲んでください。」
ガウが入れ替わり前に出る。
そして、ディオンさんたちにサンドイッチとボゥのミルクを渡す。
ボゥのミルクには疲労回復効果がある。
これで少しは元気になるかな。
もちろん嫌いな連中にはあげないよ。
ディオン
「助かった。
体力が回復出来たのは大きい。
前線に戻ろう。」
ディオンさんたちはテキパキ食べて、すぐに戻っていった。
さすがプロ。
ゲイル
「お前! 俺たちには無いのかよ!」
僕
「ありません。予定になかったんで用意なんてしてませんよ。」
ウィッツ
「お前は戦って無いだろ!
なら俺たちに寄越せよ!」
僕
「もう食べちゃいましたし。」
ゲイル
「使えねぇ!」
黄金の杯は疲労とイライラでミスが増えている。フレイムアントを倒すのに余計に時間がかかっている。
ダメージは自前のポーションで回復しているが、装備の傷みは蓄積している。
冒険者は革鎧を好む。
金属鎧は重いし、動いた時の音がうるさい。
ベースは革で一部を金属などで補強するのが主流である。
通常の牙や爪の傷とは異なり、フレイムアントの攻撃は火属性。革の傷みはひどい。
コリンズ
「まずい!?
革鎧が壊れた!」
固定するための革紐が焼け落ちた。
動く度にヒラヒラと動く革鎧が動く邪魔になる。
ゲイル
「コリンズ!
大丈夫か!」
パリン
ウィッツ
「しまった。
ポーションが!」
ウィッツは慌ててポーションを落として割ってしまう。
ゲイル
「うわっ!?」
集中を切らしたゲイルがフレイムアントに噛みつかれる。
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