ジプート連邦
フルトを出発して、いよいよ次の目的地はカーメル。
ジプート連邦は大きな国なのでしばらく時間がかかる。
イリーナ
「ジプート連邦は特殊な国です。
元々は小さな都市国家が集まって連邦国家を作っています。
ジプート連邦内部には砂漠などの厳しい環境も多く、交通の分断もいくつもあったため、街と街の結びつきがあまり強くありませんでした。
そのため各都市が強い自治権を持ち、各都市の首長が合議するという政治体制を作ることになったのです。
今回向かうカーメルはダンジョンを有する大都市です。ジプート連邦内部での発言力も強く、現在のカーメル首長が連邦議会の議長をしています。」
僕
「そうなんだ~。
でも、そんな体制でよく国として機能してるね。」
イリーナ
「ドバン帝国というわかりやすい外敵の存在が大きいでしょう。
各都市がまとまらなければ簡単にドバン帝国に併合されてしまいます。
ドバン帝国に併合されるぐらいなら、多少妥協しても周辺の都市と協力しようと代々考えているようです。」
ヒナタ
「じゃあ、都市同士の関係は友好的なんですね。」
イリーナ
「そうとも言えません。
例えば、カーメルに向かう途中に近くを通るデモール。
ここは周辺の都市と非常に険悪な状態です。」
僕
「どうしてですか?」
イリーナ
「デモールの現首長が統治を失敗したんです。
元々デモールは特に産業と呼べるほどのものはなく、カーメルに向かう商人や冒険者の落とすお金を大きな収入源としていました。
しかし、現首長に代替わりした時に街に入る為の税を引き上げ、宿屋の税を引き上げ、外部の人間に販売する水を値上げした。
最初は儲かったみたいだけど、やり過ぎたのね。デモールの南部に位置するラエルが商人たちを誘致したの。街道を整備して、宿屋も改良した。
すると商人たちは多少遠回りでもラエルを使うようになった。一気にデモールの価値は下がり、税収も激減。減った税収を住人に増税して集めようとしたけど、住人も街に来る商人たちが減ったことで仕事が減ってそもそものお金がない。
最近では進退窮まっているとの噂です。」
僕
「バカだね。」
ヒナタ
「少し考えればわかりそうなのに。」
イリーナ
「そうですね。
あまり賢いやり方ではなかったと思います。
現在デモールの首長はカーメルやラエルに逆恨みをして、議会で両都市の首長を罵っているそうです。
我々も街には近寄らず、通過する予定です。」
僕
「そうだね。
そんな街には寄らずに行こう。」
僕らは街を迂回して通過するルートを進んだ。普通ならあまり選ばないルートらしい。マジックバックに潤沢な水と食糧が入っているからこその選択ということだ。
しばらく進んでいると、
ドラ
『隠れてる人間がいっぱいいるけどどうする?先制攻撃するか?』
僕
「ドラが前方でいっぱい人が隠れてるって言ってるけど、どうしますか?」
バニング
「不自然だな。
ここは山賊が待ち伏せするには、人通りが少な過ぎる。」
イリーナ
「普通なら街道を狙うはずですね。
どうしますか?
このまま進んでも負ける要素はありませんが。」
バニング
「そうだな。
様子を見ながら進もう。
ドラは上空で待機させてくれ。
ガウとリンも万一に備えて起こしておいてくれ。
みんな、油断はするなよ。」
全員が頷く。
進んで行くと、
ぞろぞろと物陰から人が出てきた。
30人ぐらいかな?
でも装備も貧弱で弱そう。
僕はボゥを止める。
同時にバニングさんたち4人が牛車から飛び降り、臨戦態勢をとる。
バニング
「なんのつもりだ!
返答次第では斬るぞ!」
山賊
「有り金全部置いていきな。
命だけは助けてやるぜ!」
山賊テンプレきた~!
昔ならブルブル震えるシチュエーションだけど、今は笑いそうになってしまう。
どう考えても僕ら相手にするには戦力不足でしょ。
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