冒険者の事情
その日の夕食時。
マユラ
「アキラ君には悪いけど、あの手の女はパーティーの和を乱すから、いくら職業が魅力的でも手を出さない方が無難よ。」
僕
「別に友だちって訳じゃないんで、気にしないでください。どちらかと言うとあんまり好きじゃないし。」
アイラ
「だが、あのパーティーがうまくいくか、失敗するかは、あの女次第だな。」
僕
「そうなの?」
アイラ
「あぁ、
ディーンという青年はおそらく剣と盾を使うバランスタイプだ。
他のメンバーは素早さ重視のスカウトに後列からの火力になる魔法使いだな。」
僕
「えっ? いつ聞いたの?」
アイラ
「装備や立ち振舞いからある程度わかるものだ。
それで彼女が連れていたのが、ゴブリンナイトとスケルトンナイト。
どちらもバランスタイプの前衛だ。そして本人は弓を練習中といったところかな。」
マユラ
「じゃあ、あのディーン君とモンスター2体が前衛な訳か。」
アイラ
「そうだ。
同格程度のモンスターなら十分戦える布陣だが、ゴーレムとは相性が悪い。」
僕
「どうして?」
アイラ
「ゴーレムは力が強く、素早さが低い。
だからゴーレムの攻撃には回避が基本だ。
しかし、ゴブリンナイトもスケルトンナイトも回避能力は低い。盾で攻撃を受け止めるのが基本的な戦い方だからな。
だが、ゴーレムの攻撃を受け止める程の防御力もない。しかし、ディーン1人でゴーレムを受け止めるのも無理がある。」
僕
「なるほどね。確かにガウやリンはゴーレムの攻撃を回避して、牽制してた。」
マユラ
「ゴーレムと戦うなら素早さが鍵なんだ。
でもそれなら、スカウト君が頑張ればいいんじゃないの?」
アイラ
「だが、スカウトの防御力は低い。
ゴーレムの攻撃だと、下手をすれば一撃で殺される可能性がある。
そこまでのリスクを常に背負うのは難しいだろうな。」
僕
「じゃあ、ゴブリンナイトとスケルトンナイトを進化させて、防御力か回避力をアップさせるしかないのかな?」
アイラ
「それが出来れば理想ではある。
しかし、進化は簡単ではない。
今いる戦力をどう組合せるかがパーティーの腕の見せどころだ。
アキラのようにポンポン進化させるのは異常だと理解してちょうだい。」
なるほどね~。
イリーナ
「だから、Cランクの壁は高いと言われるんです。
それと、そろそろヒルギスを出ることを考えておいてください。」
僕
「え?
まだ、当初の予定より早いよね。」
イリーナ
「徐々にヒルギスでアキラさんの弊害が出始めています。
大量に優良なドロップアイテムを毎日売り続けているために、価格が乱れてきています。
それでなくても、冬場はダンジョンに入る冒険者が増えます。
これ以上売り続ければ末端の冒険者が生活出来なくなってしまいます。」
僕
「そんなオーバーな、、、」
イリーナ
「どちらかと言うと、控えめに言ってます。」
僕
「でもどうして冬場は冒険者が増えるんですか?」
イリーナ
「北方は雪に閉ざされて街を出られなくなります。北方でなくても、山間部に冬は入れません。
だから冬場は気候の影響を受けないダンジョンで稼ごうとする冒険者が集まるんです。
そしてダンジョンの産品を運ぶ商人も北方からは冬場は来ません。
ダンジョン素材を集める冒険者は増えて、街から持ち出す商人は減る。
そのため、例年冬場はダンジョン素材の相場が安くなるんです。
今年は本格的な冬になる前から価格が落ちています。
このペースでいくと、大変なことになりかねません。」
僕
「わかりました。
それじゃ、1週間後に出発しましょう。
それまで午前中は階層の更新をしてみます。
今は50階までだから、どこまで行けるか試してみたいんだ。」
イリーナ
「わかりました。
では、1週間後に出発出来るように準備しておきますね。」
僕
「よろしくお願いします。」
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