いざ出発

いい朝だ。

ついにアルバンを出発する。


「長い間お世話になりました。」


宿の女将さん

「ご利用ありがとうございました。

またアルバンにお越しの際は、

是非『赤豚亭』をご利用くださいませ。」


「もちろんです。

ありがとうございました。」


僕らは赤豚亭を後にして、貸しリヤカー屋に行った。

しかし、リヤカーを借りに来た訳ではない。

リヤカーはレンタルだけでなく、販売もされている。

そう、リヤカーを買いに来たんだ。

正確に言うと事前に頼んでいた特注のリヤカーを受け取りに来たんだ。


店主

「ご依頼のリヤカーは仕上がっております。ご覧ください。」


キレイなリヤカーだ。

借りていた時よりも大きいタイプにしてもらっている。

特殊な加工がされていて、強度も高く、悪路でも走れるらしい。

魔法的な加工らしい。

少し高かったけど、必要経費と割り切りました。



そして、出発!

リィズとフィオに乗るように言ったけど、一緒に押すと言ってくれている。

良い子たちだね。


でもリヤカーをずっと引っ張りながら旅をするつもりはない。

リヤカーを引っ張ってくれるモンスターを仲間にするつもりだ。


候補は2頭。

『ブラウンホース』か『暴れ牛』。

どちらも東の平原にいるモンスターだ。

馬車か牛車のイメージだ。

牛車と言ってもモンスターだからね。そんなに遅くはないはず。


なんかピンとくる個体がいたらテイムしよう。こういうのはインスピレーションだね。


僕がリヤカーを引き、リィズとフィオが後ろから押す。その傍らをガウが歩き、リンが近くを飛ぶ。

なかなか個性的な一団だと思う。


僕はテイムするモンスターを物色しながら歩いていく。


すると、

フラフラフラと暴れ牛が僕らの前に出てきた。

襲ってくる雰囲気は感じない。


「テイムされたいのか?」


テイム前のモンスターとは会話できない。

でも僕のテイムしたい!という気持ちを察して出てきたのかもしれない。


ガウ

『倒すか?』


「いや、

せっかくだからテイムしてみるよ。

テイム!」


魔力を注ぎこむ。

暴れ牛の体を僕の魔力が満たしていく。


暴れ牛の体が淡い光を放つ。

テイム成功だ。


「君の名前はボゥでいいかな?」


ボゥ

『うん。』


ステータスを確認してみよう。


『ボゥ

 暴れ牛


 HP  16/16

 MP  3/3

 力 11

 丈夫さ 10

 魔力 2

 魔法抵抗力 3

 素早さ 11

 器用さ 2


 スキル

 突進 レベル1』


物理特化。

得意不得意がかなりはっきりしている。


「ボゥ、リヤカーを引っ張ってもらいたいんだけど、出来る?」


ボゥ

『うん。やれるよ。』


しゃべり方が少し子どもっぽい。


用意していた革のロープでボゥとリヤカーを固定する。

とりあえずはOKかな。

街に着いたら、プロに調整してもらおう。


牛車での旅はまずまずだった。

街で見た馬車より少し遅いぐらい。

リヤカーの座り心地はイマイチ。クッションみたいなのを買いたいな。

魔法的な加工で衝撃を軽減しているらしいけど、元の世界の車に慣れた僕には厳しい。

リィズとフィオに聞くと前に乗せられた馬車より快適とのこと。

僕らはリヤカーに乗り、ガウとリンは周囲を警戒している。



少し早いけど馬車を止めて野宿の準備をする。日がくれると真っ暗だからね。

リィズとフィオに火の準備をお願いする。

ボゥとガウは護衛だ。


僕とリンで狩りに出発。

すぐそばに暴れ大鳥が2匹いたので仕留める。

ニワトリを2回りぐらい大きくしたモンスターだ。

ドロップアイテムは『矢』。

羽からの連想かな?


牛車に戻るとリィズとフィオが焚き火の準備を完成させていた。

3人で暴れ大鳥の羽をむしり、調理していく。


本日のメインディッシュは鶏もも肉のソテー。骨付き肉を豪快に焼く。

味付けは塩とハーブ。


スープは街で鶏の骨でスープをとって、街で買った野菜を刻んで入れる。


それとパン。

元の世界のパンのようなフワフワ系はない。

全てハード系。

その方が日持ちするから旅にはいいんだろうけどね。


夕食が出来上がる頃には日は沈んだ。


夕食の出来映えはバッチリ!

3人で囲む食事は本当に美味しかった。

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