街に向けて

馬車が3台停まっていた。

1台で14人乗れる、大きな乗り合い馬車だ。


エリック

「ああ、

小川さん、馬場さん、前田さん、長田さん、

ちょっとこちらに来て頂けますか。」


エリックさんのところに4人が集まる。

何故か嫌な予感がする。


エリック

「みなさんにお渡しする物がございます。」


小川恵梨香

確か、ハイテイマーというモンスターを使役する職業に選ばれた女子だ。

残りの3人は市民になった残念なメンバー。


良い話な訳がない。


僕たちが施設に入ると、馬車が走り出した。


「「「「えっ!?」」」」


僕たちの驚きの声がそろう。


エリック

「あなた方は馬車に乗せる必要が無いからです。どこへでも好きな場所に行ってください。」


小川さん

「どういうこと?」


エリック

「あなたたちには街まで運ぶ価値が無いから乗せなかったんです。

それだけですよ。」


小川さん

「ちょっと待って!

私は間違いでしょ!

市民じゃないのよ!

ハイテイマーよ!」


エリック

「テイマー系は不要なんです。

御愁傷様でした。フッ。」


小川さん

「そ、そんな、、、」


小川さん、

けっこう失礼なこと言ってるよ。

僕たち3人をバカにしているって自覚ある?


エリック

「さて、私も暇ではありません。

さっさと失せなさい。

10秒以内にここを去らないと殺します。」


小川さん

「え、、、」


エリック

「10、9、8、7、」


立ち尽くす小川さんの腕を強引に引っ張る。

とにかく道を走った。


あれは本気の目だ。

はったりではない。

残っていたら殺される。

本能的に危険を感じた。


とにかく僕たち4人は走った。

そして、息が切れたところで立ち止まった。


小川さん

「なんで、、、」


長田君

「どうしよう、、、」


前田君

「誰か助けてくれないかな、、、」


3人は茫然自失って感じだった。

でも僕は違う。

多少は予測していた。

あのエリック、カロッサは信用出来ないと感じていた。

だから、ショックはない。


とにかく、街に向かうしか選択肢はないんだ。戻ればエリックに殺されるんだから。


僕は息が整うと無言で街に向かって歩き出した。

馬車で1日かかる距離。

相当だな。今日到着するのは無理だろうな。

少しでも前に進みたい。


長田君

「馬場君、どこ行くの?」


「街だよ。」


前田君

「遠いよ~、無理だよ~。」


「好きにしなよ。僕は行く。」


長田君と前田君は顔を見合せて、しばらく考え、僕についてきた。


小川さんはどうやら現実を受け入れられないようだ。


前田君

「小川さんも行こうよ。」


小川さん

「私はあなたたちとは違うのよ!」


そう言うと道を戻って行った。


前田君

「どうする?」


長田君

「仕方ないんじゃない。あんなヤツのところに殺されに戻りたくねぇよ。」


前田君

「でも小川さん殺されちゃうんじゃないの。」


長田君

「助けたいなら、1人で戻れよ。

俺は嫌だからな。」


前田君

「そ、そんな~。」


前田君も心配だ、なんだと言っているが足を止めようとはしない。


仕方ないよ。

ここは異世界。

命を保証された日常じゃないんだ。

判断を間違えれば死ぬ。

全ては自己責任。


そう割り切らないとやってられない。



しばらく歩いた。

会話はない。

スクールカースト底辺の3人。


前田君はアニメオタク。

家がお金持ちで潤沢なお小遣いをグッズ購入に注ぎ込んでいる。

アニメ以外に興味なしというタイプだ。


長田君はミスター底辺。

スクールカーストの最底辺に君臨する男だ。

アイドルオタクで、ストーカーまがいのことをやっている。

アイドル以外に興味なく、クラスの女子に、

「黙れ、ブス!」と言って泣かせた経歴がある。

それ以来、男女全てから嫌われている。


スクールカースト底辺の3人だが、仲が良い訳ではない。

そろって、望まず底辺になってしまっただけだ。連帯感はない。

互いに、アイツよりマシだ、と思っている。


街に向かって無言で歩き続けるのであった。

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