暴食の効果

まずはソーセージとパン、それにスープを取る。


パンは少し硬いし、パサついているが贅沢は言えないだろう。

スープと一緒なら十分食べられる。


『パンを食べた

 丈夫さ+1

 ソーセージを食べた

 素早さ+1

 スープを飲んだ

 MP +1』


どこからか声が聞こえた。


・・・これが暴食の効果か。

凄いな。

色々試してみよう。


『水を飲んだ

 HP +1

 カダルの実を食べた

 丈夫さ+1

 ベーコンを食べた

 力+1』


水でも上がるのか。

しかし、水1滴とかはダメみたい。

コップ1杯、パン1切れなど、ある程度の区切りはあるようだ。


明日から何があるかわからない。

食べられるだけ食べておこう。


と思いつつ、人気のソーセージやベーコンをガツガツ食べるのはスクールカースト底辺の僕には出来ない。


人気が無いのはカダルの実。

見たことの無い木の実だからね。

みんな、あまり手を出さない。

しかも、相当酸っぱい。

甘い果物に慣れた僕たちには、果物とは思えない。というか、野菜の方がもっと甘いよ。


僕はカダルの実を1人、集中的に食べた。

『カダルの実を食べた

 丈夫さ+1

 カダルの実を食べた

 丈夫さ+1

 カダルの実を食べた

 丈夫さ+1

 水を飲んだ

 HP +1

 ・

 ・

 ・』


みんなの視線は冷たい。

デブが謎の実にがっついている。

呆れたような、蔑むような視線。


だからどうした。

危険な世界に来たんだ。

少しでもステータスを上げたいのは当然だろ。


その後、順番にシャワーを浴びた。

着替えもないので、みんな制服を着ている。


北条君

「みんな、ちょっといいかな。」


荒川君

「どうしたんだ?」


北条君

「今後のことをみんなと相談しておきたくて。」


百田先生

「街に着いた後のことですか?」


北条君

「そうです。

街に着いたら、俺たちは国から仕官の誘いがあるんだろ?」


荒川君

「さっき、そう言ってたよな。

その誘いを受けるのも、断るのも自由だって。」


北条君

「ああ、俺は誘いを受けようと思う。

仕官する条件として、仕官を希望した人は全て受け入れるように言うつもりだ。」


・・・やっぱり優等生過ぎるな。


荒川君

「どういうことだ?」


百田先生

「私たちが仕官するかどうかを自由に選べるように、国も全員に仕官の誘いをするとは限らない、ということよ。」


みんなの視線が集まる。

嫌な空気だ。

僕たち市民になってしまった人間はここで、「北条君、ありがとう。

君のおかげで救われたよ。」

とでも言わなければいけないのか?


そもそも僕たちは選ばれないって勝手にそっちで想像しているだけだろ。

まだ何も言われてないよ。


嫌な沈黙が流れる。。。



北条君

「俺が言いたかったのは、本人の意思で好きに仕官するか、しないかを選んで欲しいんだ。」


荒川君

「お前はどうなんだよ!

本当に仕官したいのか?

お前が誰かの犠牲になる必要なんてないぞ。」


やはり、嫌な視線が刺さる。

僕が犠牲になってくれと言った訳ではないだろ。


北条君

「大丈夫だ。

俺は閃光の勇者だぞ。

どんな未来でも実力で掴み取るさ。」


荒川君

「わかったよ。俺も付き合うぜ!」


パチパチパチパチパチパチ


友情ごっこは他所でやってくれ。

僕は何も悪くないのに、いつの間にか悪役じゃないか。

くだらない。


その後、解散して、男たちは床で雑魚寝することになった。




翌日の朝。

朝食は昨日の夜と同じメニューだった。

僕はパン、ソーセージ、ベーコン、スープを各1つ。

後はカダルの実。


みんなが食べ終わってもギリギリまで食べ続けた。

朝だけでも10個以上食べた。

冷たい視線が刺さるけど無視だ。

ここで食べるのを我慢したところで、仲良くなれる訳でもない。

気にするだけ無駄だ。



そして、出発の時間。


エリック

「みなさん、馬車が用意出来ました。

順番に乗ってくださいね。」


ようやく街に出発だ。

街に着いたら仕官は断ろう。

クラスメイトとはお別れだ。

自由に生きてやる。

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