A7

人喰い夜。

今日の4歳児は寝なかった。

寝るのが時間の無駄だと思っているようで、

「ねない!」と笑って強がった。

私は彼に、絵を描いた。紙に真っ暗な闇を。

「何も見えないね。君はこの中にいるんだよ。」


「いないよ?」鼻水を垂らした彼はまた笑った。

「夜に食べられてしまったんだね。」私が微笑むと彼は鼻を啜って「ううん。」と笑いながら言った。

私の顔を決して見なかった。

彼の声が少しづつ小さくなっていった。

彼の顔は涙でぐしょぐしょだった。

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A7 @a2u

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