第4話 暇つぶし
ガラスの窓から部屋の中を確認することが出来る。
「嫌だ、死にたい、殺してくれ、死にたい、行きたくない、嫌だ嫌だ、殺してくれ…」
男がなかなかに物騒なことを呟いている。
「えっと…あなたは過重労働の末亡くなってしまったようですが…」
「あんな環境にいたら誰だってこうなりますって、」
「前世のようにスペックや環境に恵まれない何てことはそう起こりませんよ。」
「……………」
「だから安心して来世に向かって行きましょう…」
「……無理なんだよ。」
「どうか殺してくれ、僕はもう疲れたんだ。頼む」
「えっと、自信を持ってください。あなたが前世で貢献したことによって何十万人もの人が救われたんです」
「変わらない。生まれ変わったところで僕はすぐ挫折して、諦めて死ぬことになるんだ…」
扉を開けてカウンセリングしている部屋に入る。
職員はこちらを訝しんだ目で見てくるが私が一向に部屋を出ないのを悟ったのか出ていってくれた。
男の隣に座る。そこから数十秒間静寂が続いた
「あなたも死んだんですか?」
男がこちらを向く。だが、言葉は発しない
「びっくりですよね。死んで気がついたらここに居るんですから、私てっきり死んだらなんも無いところに行けるとばかり思ってました。
ですが聞くところによると転生まで数年待たされる。某夢の国もびっくりの待ち時間ですよ」
「…数年間ただ待つだけ何てとても暇だと思いません?
どうです、私と少し暇つぶししませんか?」
「……君も僕を転生させようとするのかい」
男がこちらを見る。
その目が語るのは不安と絶望…これはこの人の人生を語るには十分すぎる情報だ
「残念ながらそうなりますね…私にも目的があるんですよ。でも、今すぐそれはで来そうにない。
だから暇つぶしって訳です。まぁ、それも内容次第ですけど」
そう言うと男はまた黙ってしまった
「…最も聞いててつまらない話ってなんだと思います?」
「私は、ね自慢話あれが1番つまらないと思うんです。」
「『我慢した結果辛かったことが出来た』とか『あの時の悔しさが糧になって自分にとっていい経験になった』とか、『ゲームでランキング上位に入った』なんていう大きなことじゃなくてもいい。
…結局それらって言うのは成功者の自己満足であって聞かされてるこっちからしたら妬ましくて仕方ない。」
「私はね悲劇的な話にこそ価値があると思う。
だって、失敗者はそういった話を出来ない。
この世は敗者に優しくない。見なかったフリをして平気な顔で除外する。」
「…だからこそ私はあなたの話を聞きたい。」
生きて逝かして、私は死ぬ 夏凪碧 @aqua0825
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