第3話 執着心

 署長から対面して貰える事になった私は職員に連れられ蒸溜所内を案内されていた


「それで今はどこに向かっているんですか」


「短かろうとここで数日は過ごすことになるんですから施設を迷子にならないくらいには案内しますよ」


 ま、私が必ずついてなきゃ行けないので迷子になることは基本ありませんけど

 そんなもんなのか、と思いつつ私は内装を見渡す

 やはり蒸溜所と言うけだけあるのか気持ち悪いほどに白が基調の内装だ

 どこまでも続く長い廊下に学校のように部屋が並びんでいる

 

「ねぇ、あそこで何やってるの?」


 私が指さした先には面会室…とは少し違うがテーブルを隔てて向かい合ったここの職員と縛り付けられた男性がいた


「あーここは再浄化室です。簡単に言っちゃうとここではあなたみたいな強い執念を持った人をここで浄化できる程度まで人力で浄化させるところです」


 職員はそう言ってるがいまいち信じられない。確かにここで数年待つ理由がこういうので手間取っているってことなら納得はできるが、今見ている男性は実態がある。

 私が見てきた霊は少なくとも全て魂だけだった。なのに何故彼だけはと思ってしまう。


「ここで再度浄化するには実態を持たせる必要があるんです」


 私の考えを読み取ったかのように職員は話す


「強い執念を持ったと言ってもあなたほど強く持った人は私でも数人しか見たことがないんです。ここに来るまで見てきた人達はみんな喋ってなかったでしょう?」


 言われてみれば確かにそうだ。皆1列に並び素直に順番を待っていた。


「再浄化ってのは何回も行うんですか」


「現世に戻せるようになるまでは基本いくらでもします」


「基本?」


 私の疑問に対し職員は落ち着いたように話す


「たまに居るんです。浄化しきれずに現世帰ってしまう霊が」


「別に逃げてしまっても普通なら問題は無いんです。数年現世の畑や田舎を漂えばいずれまたここに戻ってくるんですから。しかし、彼らのように強い執念があるとそうはいきません。」


「現世に酷く執着を持った存在が現世に帰る。それ即ち人に害をなる存在になりえてしまうんですよ。目撃した人を襲ったり、その人の身体を乗っ取ってしまったり…それがいつの日か幽霊や怪異と称されるようになったんです」


「昔は良くも悪くも真っ直ぐな霊が多かったんですけど、最近は精神の方にも障害を持った霊も多くてですね。カウンセリングなんかも行ったりしているんです」


 …カウンセリング、あまり好きな言葉では無いな。

 でも、ここの人達はそれを毎日何人も対応してるんだ。なら私は何ができる…


「ねぇ、ここの部屋って入ることできる?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る