第十三章 攻略

 アルフレッドはコントローラーを握るとゲームをスタートした。


「んん? どこ押せばいいんだろう」


「スタートボタン! ここ!」


 とても王様とは思えない態度のマハルのサポートで1面がはじまる。


 まずは操作キャラクターを選ぶところからだった。


「どの子がいいんだろう」


 カーソルを合わせるとバストアップのグラフィックとともにショットパターンが表示された。


「この女の子の絵は誰が書いてるんだろう。ずいぶんかわいらしいけど」


「わらわじゃ! われのオリキャラじゃ!」


 メインキャラクターの女の子のグラフィックは少しつたないがプリミティブな魅力のあるイラストを元にしていた。


 すべて神凪かんなぎマハルのイラストを元にしたオリジナルキャラクターだった。


「ずいぶんひまな王様だなって思っただろう!」マハルはアストリアを睨んだ。


「思ってないですってば!」


「あれ、決める前に勝手にはじまった」アルフレッドが操作キャラクターを選びきる前にゲームスタートした。


「時間切れです」紗良さらが説明した。


「これ面白いぞ」ゲームを進めながらアルフレッドはつぶやいた。


 ボタンの使い方も徐々に慣れてきて説明がなくとも敵を倒していく。ボムは早々に使い切ってしまった。


 1面ボス 鬼畜列車が現れた。

 それまで1回しかダメージを受けていなかったがボス相手には連続でダメージを受けてしまいゲームオーバー。

 アルフレッドはうなった。新世界に復活したTVゲームはプレイヤーを甘やかさない難易度である。

「地下図書館に同席しなかった分、良いところ見せたかったんだけど……」



 アルフレッドのあとも皆順番にプレイしたが誰も似たりよったりのプレイ結果である。

 アストリアは2面、フェイは3面のはじめでゲームオーバー。のこりのメンバーは1面でゲームオーバーだった。


「これ、全部で何面あるんですか?」フェイが眼鏡を拭きながらマハルに問う。


「5面、つまり5ステージ。

 ラストボスとの対決ステージも合わせると6面」


「2週間で6面かあ。なんとかなるんじゃない」フェイは椅子にのけ反って背伸びした。


「そうそう。このゲームをやりこむのは良いが、やりすぎないように注意してくれたもう。

 イライラしはじめたら休憩すること。

 目安は1時間。ゲームは1日60分」マハルは一同に注意喚起した。


「このゲーム、1時間でクリアできるのですか?」


「………。」マハルはクレリアの質問を無視して口笛を吹いた。実に上手な口笛だった。


「気になるところがあるんですけど。

 相対速度を考えれば敵弾のほうが速く見えるはずなのに逆に自機の弾が速くて敵弾が遅くなってる。

 味方が何人もいるならどうして同時に拠点攻撃しないの。

 ボムがそんなに強力なら敵も使えばいいじゃない!

 一番おかしいのがあんなに弾薬を積めるわけがないでしょ」


 フェイが次々にゲームの矛盾点を指摘するとマハルは苦しそうに眉を細めた。

 一国の王より年齢に相応しい表情である。


「ゲームもフィクションだから、面白くするための演出じゃな」


「そういうことならいいです」


「これから2週間、ひとり1日60分でこのゲームをクリアするが良い!

 この部屋を自由に使ってくれ。

 立会人として紗良さらをつける。ただしゲームのアドバイスはいっさいできない。

 ちなみにゲームをしての感想はできるだけメモを取って残してくれい」



攻略は順調に思えた。


1面   森林ステージ

1面ボス 鬼畜列車


2面   火山ステージ

2面ボス 病葉わくらば


3面   神殿ステージ

3面ボス 荒神あらがみ


 ボスはみな人外の姿で遺跡ルイン・モンスターをモチーフにしていた。

 1週間半ばでみんな3面まではノーミスでクリアできるようになっていた。


 ただし魔術師のフランクはゲームをプレイしようとしなかった。

 シオンも同様である。

 理由はフランクはゲームに適性がないと自分自身で判断したからで、シオンはこのゲームに興味がないからである。


 だが地下迷宮ステージの4面から難易度が急変した。


4面   地下迷宮ステージ

4面ボス 逆神さかがみ


 速度が速い青玉を撃つ敵が現れたのである。

 青玉を打つ敵は色が違うので心構えはできるのだが、いままで遅い弾を見慣れていた彼らは青玉に苦戦した。段違いの難易度、プレイヤーを殺しにかかってくる敵に停滞ムードが流れる。


「これ、無理だよ」


 アルフレッドは4面開始直後でライフがゼロになってしまう。


 コンティニュー機能もあるのだが今回のチャレンジでは使用禁止だった。


「4面のあと5面もあるんだろ? 4面でこれじゃあクリアできるわけないよ」

 みんな頭を抱えてしまった。


「4面からシールドの子とオートボムの子をメンバーにいれて少しでも前へ進もう。それをみんなで見て研究するんだ。いままではどのキャラクターの組み合わせでもクリアできたけど4面からはキャラの選択が重要だと思う」


「アストリア君、きみって見た目よりおりこうさんなのね」フェイが眼鏡をただした。


「そのいい方は誉めてるのか?」


「もちろん」


 4面まで進んだ人間はキャラクター選択でメノウ(オートボム機能)とヒメ(シールドショット)を選択して、のこりのひとりは自由に選びプレイした。


 フランクもデータ収集には協力した。


 徐々に4面攻略が見えてきたときクレリアが黄色い声をあげた。


「いまの見ました⁉」


「なになに?」フェイがのぞき込む。


「わたしミオちゃんが好きでいつも使っているんですけど1面のボス一瞬で倒しちゃいました」


「どういうことだろう。もしかして!」


「ボスに弱点攻撃があるのよ! それを探し出せば……!」


 クレリアとフェイは手を取りあってガッツポーズをした。


 部屋の隅に立ってる紗良さらは彼らのやり取りをメモに取っている。



 攻略の糸口が見えはじめた。


 彼らは繰り返し出撃メンバーを替えてボスの弱点を調べた。


 わら半紙のたくさんのメモを取る。


 それによって、1面ボスにはオプションショット。2面ボスにはワイドショット。3面ボスにはレーザーショット。


4面。障害物が多い地下迷宮ステージはバウンドショットが極めて有効。

 ボスである逆神にはバックショットでコアを狙い撃ちするのが有効でありボスに到達できれば4面をクリアできるようになったのだ!

 のこり3日で5面とラストボス攻略。

 彼らは充分に可能性があると思ったが5面からはさらなる試練が待ち受けていたのである。



    つづく

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