第七章 古代図書館
屈強な衛兵にガードされながら女王マハル、
階段を踏む足音が五月雨のように響く。
「図書館って、地下にあるんですか? 本って風通しの良いところに保管するものだと思うのですが」クレリアの問いに、マハルは興奮してはしゃいだ。
「おおっ! かわゆいだけでなく賢いのう。ますます後宮に欲しくなった」
〝パンっ〟(
「本来なら図書館は地上に建てるべきものだ。
だが保管されているものが保管されているものだからな。全世界を揺るがすようなものだ。
いいか、おぬしらけっして口外するな。手紙や日記に文章化することもだめじゃ。
生涯、心の中にとどめ置いて墓の中に持っていけ。それができぬならいまからでも引き返すのじゃ」
先頭を歩いていたマハルは頭を撫でながら一同を振り返った。
「そんなこといってもいまさら階段を上るのめんどくさいし」
「わたしもです」クレリアもアストリアに同意した。
「ふむ、わたしもだ」シオンも首を縦に振る。
「そんな理由でいいのか? おぬしら緊張感が足りぬな」
そのときカンカンと階段を下る音が頭上から響いた。みんな頭上の階段裏を見上げる。やがてフェイの白いズボンが見えた。
「待って~。わたしも行く!」
「
フェイは最後尾のクレリアに追いつくと彼女をぎゅっと抱きしめた。
「ごめんね、クレリアちゃん。
わたし
とっくに足を踏み入れていたのに傍観者でいるつもりだった。
わたしより幼いクレリアちゃんが大きな運命に耐えているのにね。
わたしは傍観者ではなく観測者になるわ。
クレリアちゃん、迷ったわたしを許してくれる?」
クレリアはなにかモゴモゴいったがフェイの胸に埋もれて聞こえない。
フェイがクレリアを解放する。
「わたしは
「ありがとう! あなたは天使の生まれ変わりかしら」
「わたしはひとりの人間でありたいです」
マハルはクレリアを抱きしめるフェイを見てくちびるに指をひっかけた。
「いいなあ」
「おい」紗良がつっこむ。
「クレリア、よくいった。あっぱれな女だ」アストリアは心からそう思った。
「お褒めにあずかり光栄です」クレリアは誇らしげにアストリアを見かえした。
一同の中でフランクだけが冷徹な視線でクレリアを見ている。
――人間? おまえは人間のふりをしている
一行は最下層部にたどりついた。マハルは衛兵たちに待機を命じると鍵を取り出す。
重々しい扉を開けて中に入ると室内は意外にも質素だった。
大きな木製テーブルにまわりの席に腰かけるよう紗良がうながす。
「この古代図書館に所蔵されているのはある人物が生前書き残した数冊の日記帳。
それだけじゃ。
いいか。かなり衝撃的な内容だが、皆覚悟してくれ。紗良、読み上げてくれ」
マハルが神妙な顔をした。
「このファイルにファイリングされたノートは東亰爆心地から奇跡的に焼け残ったものです。
このノートの所持者、つまりこの日記帳を使用していた人間が前世界破壊の原因を引き起こしたと思われます」紗良は手袋をして慎重に扱った。
「なんだって!」その声はひとりのものではなく、皆が口にしていた。
「彼女の名は
※私事ですが、島根県出雲市に取材旅行に行きますので、来週の更新11/28(火)11/29(水)はお休みします。
月・木・金曜日はいつも通り更新いたしますが、月曜は午前中に更新いたします。
よろしくお願いいたします。
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