クレリアの詩 アストリアの独白 シオンの追憶

   クレリアの詩


 わたしはこの物語の結末を知っている

 悲劇で終わるの


 あの男性ひとは呪いの言葉を吐き

 わたしを激しく憎むことになる

 これ以上ないくらい最高の悲劇


 誰にもどうすることもできない

 そのときあの男性ひとがどんな顔でわたしを見るのか

 神さまでもわかるもんか


 もうすぐ、もうすぐ東方へついてしまう

 怖いよ……


 奇跡という言葉ですら呪いに思える

 それは人間のための言葉だから


 わたしは世界なんてどうでもいい

 この世界がどうなろうと

 人間ですらないわたしには関係ないこと


 でもね

 わたしクレリア・リンリクスは

 アストリア・ウォルシュを

 心から愛しています

 貴方に優しくされてはじめて世界が輝いて見えた


 たとえ貴方に殺されようとも


 この気持ちは誰にもけがさせない


 神さまにだって

 穢させるもんか!


 その瞬間ときがくるのをわたしは静かに待つの

 仮面をつけた自動人形オートマタのように




  アストリアの独白


 神は傍観者


 たくさんの救いを求めるものが

 悲痛な叫びをあげながら暗闇の中で死んでいく


 神は恵まれたものに寛容で

 愛されたことのない人々に無慈悲だ


 それでも神を信じろと?


 かつてはオレもそう思っていた

 不当に未来を奪われた愛した女のために

 殺しつくしてやった


 世界中のどこでも同じじゃないか


 オレがやらなくても誰かがやる

 戦争を


 殺戮と闘争、そんなものに銅貨1枚の価値もない

 神様のために人を殺す人間より虫けらのほうがまだましだ


 どれほど戦争の悲惨さを物語っても死体の醜さ、醜悪な臭いを完全に伝えることは出来ない


 恵まれた人間が他人のために自分の幸福を差しだしたことがあるか?


 クレリア……

 あの女、いやあのはなんなんだ

 ふしぎだ


 あいつといると調子が狂う

 いや違う

 あの頃に戻ったみたいだ

 セレナが生きていた頃に


 最近神や運命についてよく考える

 もしかしたらクレリアは神がオレに遣わした天使なんじゃないかって


 オレは間違っていたんじゃないかって

 もう少しはやく遣わしてくれたら

 バカみたいな戦争をやらなくてすんだけどな




  シオンの追憶


 髪の色

 肌の色

 瞳の色


 わたしはこのセカイの異邦人

 そう思って生きてきた


 あの男はわたしを品定めしなかった

 それだけでわたしは……


〝わたしを選んでくれ

 おまえを愛してる〟


 ソードマスタ―として

 剣の道を究めたわたしが

 最期まで〝愛してる〟をいえなかった


 神が許すなら

 守護天使になっておまえを見守ろう


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