絶命弾レポート

著者 フランク・マクマナス


 あれから私も絶命弾について調べてみた。


 古文書曰く、

 絶命弾を受けたものは全身の血液が逆流して死亡する。

 その確率は100パーセントという回避不可の攻撃である。


  アストリアは絶命弾を受けても死亡しなかった。


 心当たりはある。

 彼の因果律測定羅針盤の結果だ。

 鑑定できないスキルがふたつあった。


 絶命弾無効化スキルを持っていれば、絶命弾を受けても生きていられる。

 絶命弾を無効にするスキルはただ2つのみ。


 ひとつは癒しの女神イシュメリアの加護。

 もうひとつは魔王カイザードの寵愛。


 イシュメリアの加護は絶命弾を50パーセントの確率で無効にする。


 カイザードの寵愛は絶命弾99パーセント無効化スキルだ。


 アストリアの数奇な人生を考えるとあり得ない話ではない。


 魔族の王カイザードは人類の味方ではない。

 だが、例外的に気に入った人間には特別な力や庇護を与えることがあるという。


 魔王の寵愛を受けられる条件は『千億の絶望』を経験したものといわれている。

 

 もうひとつ女神の加護が受けられる条件。

 結ばれる運命のふたりが、神々の思惑とは違う形で引き裂かれた場合。

 想い人が冥府でもそのものの幸福を願った場合に受けられるという。


 これもあてはまる。アストリアとセレナという女性との関係だ。

 アストリアは絶命弾無効化スキルをふたつも持っている、この世界でただひとりの人間である。


  彼は女神と魔王、両方に魅入られている。

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