第二十章 クレリアの逆鱗
アストリアは酔いでふらふらなシオンを連れてアランの家まで来た。何度見ても大きな屋敷である。
広いし2階もあるからシオンを泊める部屋くらいなんとかなるだろう。
空は暗いが深夜といえる時間ではない。
ちょうど夕食の時間か……。
彼の直感がクレリアには見られないほうがいいと告げていた。
このことがのちに恐ろしい事件を引き起こすのだった……
まず、誰にもバレないようにシオンを部屋に運んでからアランとフランクを泣き落そう。
シオンの酔いがぬけるまでおいてもらえるように。
扉を開けようとして面食らった。
鍵がかかっている。
あたり前か。
敷地を回り開いている窓を探すと1ヶ所だけあった。
彼のやっていることは泥棒と一緒である。
まず、オレが入ってシオンを引き揚げるか。
扉の鍵を開けてもいい。
こんなとこ人に見られたら……、神よ……
彼は細心の注意を払って窓から侵入した。
「おい! 中に入れるか? シオン!」
シオンは虚ろに目を覚まし、意識も定かではない状態でアストリアの指示に従おうとした。
「う~ん、ここはどこなんだ……」
彼女は前後不覚状態である。
そのとき!
「あ~‼
なにしてるの傭兵さん!
その人酔ってるよね⁉」
クレリアの悲鳴が屋敷中に響いた。
クレリアが手を洗いにきたのだ。
ここは洗面所のある廊下だった。
やっぱり神様はいないんだ。
アストリアは顔面蒼白になった。
「その人だれ⁉
ルクシオンって人じゃないの⁉
サイッテー!
酔った女性をお持ち帰りしてる!
しかも、他人の家に!
意味わかんない!
ドクズ! 女の敵!」
クレリアはしっぽを踏まれたネコと同じ剣幕で責めたてる。
「違うよ!」
「なにが違うの!」
「オレは酔ったシオンを介抱しようとして……」
「その呼び方なに?
オレの女ってわけ⁉
じゃあどうして窓から入るの!」
「クレリアがガミガミいうと思ったから」
「わたしはガミガミいってないでしょ‼」
クレリアの怒りが2倍増しになった。
「いまいってるよ」
「誰か来てー!」
「あっ、クレリア……!」
アラン達、使用人も洗面所に集まってきた。
人生最大のピンチだ。
暗黒傭兵部隊
お説教がはじまった。
使用人たちの視線も針のようだ。
アストリアは叱られたイヌのように意気消沈している。
フランク「君は一体なにをしてるんだ? 明日決勝トーナメントだろう。ライバルを助けてどうする」
アストリア「酔った女性を道端に捨てられなかった」
フランク「黙れ」
アラン「窓から入るなんて異常だよ。
君が女性を介抱するつもりだったということはとりあえず信じてあげよう。
でもこの家の主は僕だ。僕に相談するのが筋じゃないか」
アストリア「いま思うとそれが正しいと思う。
とりあえず中に入ってから説明しようと思った。全部酒のせいだ。酒のせいで正常な判断力が失われていたんだ」
クレリア「どうして窓から入ろうとしたの!」
アストリア「それはさっき説明した……」
クレリア「だまりなさい。口答えは許さない!
もう一度最初から説明して」
アストリア「あの、オレ明日試合だからもう休んでもいいかな」
クレリア「ダメッ!」
アストリア「そんなぁ。明日負けたらみんなのせいだからな」
みんな「自分のせいだよ」
シオンは体内から酒も抜けてソファーでぐぅぐぅ寝ていた。
つづく
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