時を紡ぐ~黒い扉~
たから聖
第1話 時を紡ぐ扉
(あぁ、まただ。)
私は鈴菜。なぜかいつも扉の前に座ったまま……
先へ進めない。
頭が混乱する。考えれば考えるほどに、扉の向う側への恐怖も募る。
だが、なぜか分からないが
《行かなくてはならない。》
という使命感が拭えないのも事実だ。
何故私は、いつも暗闇の中にある黒い扉の前に座ってしまうんだろう。
『今日こそは!!』
そう思っても、、、扉がまた1つ現れるのだ。
迷ってしまう自分が居る。
選択ミスすると、
とんでもない目に合いそうな気すらしてくる。
こぶしをギュッと握りしめて
私は立ち上がる。
【ボーン……ボーン……】
時計が鳴る。
いつもの時間だ!!
私は、また黒い扉の向う側を
想像しながらも思案する。
《二つに一つ》
右か左か……。
《今日こそは!!》
左!!!とドアノブに手をやると
【ガチッッ】と音を立てた。
と同時に、何故か
【しまった!!】と思えた。
慌てて右のドアノブを開く。
私は、両方の重い重い黒い扉を触ってしまった。
左の黒い扉からは、、たくさんの魔物が出てきた。
《うわぁー!!!》
慌てて右側の黒い扉の世界へと
飛び込んでみると……
そこには、糸を紡いでいる
おばあさんが1人いた。
おばあさんは、私の存在に気が付くと、、
まるで、全てを知ってるかの様な話し方をする。
【あんたを待っとった。よぉ来てくれた。ありがとう。】
おばあさんからは、
【時を紡ぐ糸】をプレゼントされた。
私は何故かとても良いものをプレゼントされたんだと思えた。
おばあさんにお礼を伝えると……
そのはにかむ様な笑顔は
消えていった……。
私は、【時を紡ぐ糸】を眺めると
それはそれは、
美しくキラキラと光っていた。
~おばあさん、ありがとう~
『私、頑張ってみる』
『頑張って生きてみる』
『???』
『生きてみる??へ?わたし?』
黒い扉のこちら側の世界では、
自分が何者なのかも
分からなくなるのか??!
さっきまで、自分の名前も??
知ってたはず??!
あれ?
ワタシ……。
ボーン……ボーン……。
あぁ、急がなくては!!
急な階段を走り、登っていく。
下を見ると、ドンドン階段が
消えていく。
早くしなくては!!
せっかくおばあさんが!!
おばあさん?!
おばあさんが?!
ボーン……ボーン……
◇◇◇◇◇◇
あ!!糸が上から垂れてきてる!
捕まって登らなくちゃ!
お願い!!その糸!!
私を上の世界へと誘っておくれ!
叫んだと同時に……
誰かが、私を呼ぶ声がした。
『……。!!!』
『奈!!』
『鈴菜!!シッカリ!!』
あぁ、ワタシ鈴菜って言うんだね。まぶしい。はぁはぁ。
おばあさんの糸を、糸をタカラモノに……
『良かったぁぁ!意識が戻ったぞ!!』
『鈴菜!頑張ったな?!』
先生〜先生〜!!
バタバタバタ……ボーン…。
ボーン……ボーン
目を動かすと、、時間は12時きっかりだった。
【時を紡ぐ糸】
を探したが、そんなものは見当たらない。
そっか……。ワタシ……
意識不明だったんだね??
確か、あのおばあちゃんは?
深い意識の中に巡る顔立ち。
(ひいばあちゃんだ!!子供の頃に、写真見た。おばあちゃんが助けてくれたんだね?)
【時を紡ぐ糸】を天国でワタシの為に……編んでくれてたんだね。
(ありがとう。おばあさん。)
(いつかまた逢おうね。)
終わり
時を紡ぐ~黒い扉~ たから聖 @08061012
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