第2話 登校する前ですらも甘々

「修也! いい加減に起きて! 修也が早く起きてくれたら一緒に行ってあげるわよ!」


 修也の1日は、唯に起こされるところから始まる。

 こうやって呼びかけられて尚且体を揺すぶられるが、寝るのが大好きな修也が一回で起きることはなく……


「ん……後少し……」


 案の定毛布に体を包んで二度寝をしようとする。

 しかしそんな事は唯が許さない。


「そんな事言うなら先に行くわよ!?」

「…………」


 唯がそう言ってみるが未だベッドから起き上がらない修也。


「ねぇ、本当に行くわよ? 今起きたら一緒に行ってあげるわ」

「…………」

「……起きてよぉ……一緒に学校行こうよぉ」

「よし起きた。一緒に学校行こうな」

「……うん」


 最終的に全然起きない修也に、唯が自分の言葉を撤回して涙目になる。

 そしてその瞬間に修也が起きて、唯の頭を撫でながら一緒に行こうと誘うのが毎日の日課のようなものだ。


 そもそも何故修也の寝室に唯がいるかというと、2人は同棲しており、同じマンションの一室に住んでいるからだ。

 だが、本来は2人共1部屋ずつで契約しているのだが、2人がお互いにずっと一緒に居たいと言ったことにより、一人暮らしを始めて僅か一ヶ月で同棲が始まった。


 そのため現在では2人の生活用品や必要なもの全てがこの修也の部屋に置いてあり、もう片方は物置と化している。

 更に言えば、修也の部屋なのに物の配置は唯の方が詳しい。

 

 朝ご飯は唯が用意しており、今日はご飯と味噌汁とサバの塩焼きらしい。

 1つ1つ唯が修也のために本気で作っているため、めちゃくちゃ美味しく、


「うまっ! 相変わらず唯のご飯は美味しいなぁ。ありがとう唯」


 と目を輝かせながら修也が感謝を伝えると、それだけで頬を赤くする。

 

「ど、ど、どう致しまして。あっ……べ、別に修也のために作ったんじゃないからね!?」

「……そうなのか?」


 その言葉を聞いて少し落ち込む修也に唯が大慌てで訂正する。


「ち、違うの! わ、私は何時も修也のことを思って作っているわよ……」

「そう言ってくれると嬉しいねぇ……これからも宜しくな。俺、唯がいないと楽しい小説家人生が送れないから」

「こ、これからもっ……わ、私が居ないと何にも出来ないのねっ! い、いいわ、これからもお世話してあげる」


 そう言ってそっぽを向く唯。

 そしてそんな唯にバレないように、修也が小さくガッツポーズをする。


(よし、落ち込むフリからの将来確約作戦大成功! これはもはやプロポーズだったのでは? でもいいって言われたし……やった! 大好きな彼女と楽しくて快適なニート生活の幕開けだぜ! それにほんとに俺は唯が居ないと駄目だしな。生活面でもメンタルでも)


 1人将来のことについて舞い上がっている一方で、そっぽを向いたままの状態で固まった唯は、顔を真っ赤にして目はぐるぐるとしており、誰が見ても照れてテンパっていると分かる顔を必死に隠していた。

 心なしか、あわあわと小さな声が漏れてすらいる。


(どどどどど、どうしよう……私これからもお世話するって言ったわよね!? これってプロポーズを了承したようなものなのでは? ……でも2人で生活するの、いいかも……)


 奇しくも同じことを考えていた2人であった。

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生涯小説家一筋志望のニート気質な俺に、健気でツンデレな学年一の美少女彼女が居る事を誰も知らない(公認です) あおぞら@書籍9月3日発売 @Aozora-31

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