龍VS無敵!!
「はぁ? お前、俺を舐めてるだろ? 無敵の俺を、どう斬るっていうんだよっ!?」
リュウガの発言に苛立ちと嘲りの両方の感情を抱いたシアンが彼を侮蔑するように叫ぶ。
そのまま、拳を真っすぐにリュウガへと振り抜くシアンであったが……その一撃をリュウガは抜刀することなく、鞘で叩いてパンチの方向をずらしてやった。
「へ? ばぶっ!?」
振り抜いた拳が何故だか自分の方を向いていることに気付いた次の瞬間、シアンは自分で自分のことを殴り飛ばしていた。
よろよろとよろめき、その場に尻もちをついた彼へと、リュウガが静かに言う。
「やはり、お前の無敵は痛みやダメージを受けないというだけであって、衝撃によって体勢を崩したりはするようだな。それならいくらでもやりようはある」
「ちっ、ちくしょう……! うわっ!?」
ぶんぶんと首を振って立ち上がろうとするシアンを、鞘で突いて吹き飛ばすリュウガ。
仲間たちから彼を引き離したリュウガは、振り返ると共に口を開く。
「ここは僕一人で十分だ。みんなは上に向かってくれ」
「……大丈夫なのか、リュウガ?」
「ふっ……! 僕に質問するなよ、相棒」
「へへっ! そうだったなぁ!」
自信あり気に、そして不敵に笑ったリュウガの肩を叩いたユーゴが大きく頷く。
他の仲間たちも頷いた後でハウヴェント城の内部へと駆け込んでいく中、リュウガがマルコスへと言った。
「マルコス! ……僕がさっき言ったこと、忘れるなよ?」
「……私にできることを、全力で……だな?」
その言葉に小さく笑みを浮かべたリュウガへと頷いた後、マルコスもユーゴたちの後を追って走っていく。
リュウガもそこでシアンとの戦いへと意識を切り替えようとしたのだが、最後まで残っていたライハがそんな彼へと叫んだ。
「リュウガさんっ!」
僅かに残っていた仲間たちへと向けていた意識を再び広げたリュウガがその声に振り向く。
そんな彼を見つめながら、何を言おうか迷ったように口をもごもごとさせていたライハは、精一杯の気持ちをぶつけるように言葉を絞り出す。
「どうか……ご武運を」
そう自分に向かって言うライハと、数秒見つめ合うリュウガ。
険しい表情であったが、その言葉を残して仲間たちを追おうとするライハへと、彼が言う。
「……お前も気を付けろ。ここで死なれたら、贖罪を見届けられないからな」
「……!」
自分に対する気遣いの言葉に驚いたライハが足を止め、振り返る。
そんな彼女へと複雑な表情を向けながら、リュウガは忌々し気に唸った。
「早く行け。そんなふうにもたもたされたら、僕が一人で残る意味がないだろうが」
「は、はいっ!」
バタバタと慌てて駆け出し、城の中に入っていくライハを見送ったところで、リュウガは今度こそ意識をシアンへと切り替えた。
立ち上がり、ゆっくりとこちらへと歩いてきた彼は、苛立ちを募らせた声で唸るようにして言う。
「うぜえんだよ、本当に……! お前が死んでりゃあ、戦巫女たちも俺のものになったっていうのに……!!」
「あそこまで拒絶されておいて、まだそんなことを言える図太さには逆に尊敬の念を抱くが……大前提が間違っている。お前がどれだけ望もうとも、僕は死なない。覚えておけ」
「はっ! じゃあ、ここでぶっ殺して、その考えが間違ってたってことを証明してやるよっ!」
リュウガへの憎しみを燃え上がらせながら、シアンが攻撃を仕掛けてくる。
繰り出される拳や蹴りを回避し、時に受け流すリュウガは、隙を見て鞘に納めたままの刀でシアンの腹を打ったのだが、やはりビクともしない。
「はははっ! 無駄だってのっ! さっきはちょっと油断したが、気合いを入れればこんなもんだっ!」
「………」
【Invincible】の力を誇示するように吠えたシアンが見え見えのパンチを繰り出す。
それを避け、大きく後方へと飛び退いたリュウガは、目を細めながらある違和感についての考察を進めていた。
(おかしい……何故、奴の無敵の能力にはバラつきがあるんだ?)
先ほど、メルトとセツナが一斉射撃を行った時も、その後にユーゴが攻撃を仕掛けた時も、シアンはそれらに対してほとんどダメージを受けたようなリアクションは見せなかった。
しかし、今さっき自分が彼の胴を突いた時にはダメージこそ受けなかったものの大きく吹き飛ぶという明らかに違う反応を見せている。
もしかしたらクリアプレートの力を発動するために必要な魔力が枯渇したのではと考えたリュウガであったが、先の胴打ちを再び平然と耐えたシアンの反応を見るに、その可能性はなさそうだ。
であるならば、あの不可思議な現象はいったいどうして起きたのか……? と考えた彼は、先ほどのシアンの発言とクリアプレートの特徴を思い返すと共に、ある可能性を思い至る。
「……試してみるか」
あくまで可能性ではあるが、十分に試してみる価値はある。
そう考え、息を吐いたリュウガは気を練り上げると……鞘に納めたままの刀を構え直し、その瞬間の訪れを見極めるように精神を集中させていった。
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