あ、今回もサービス回です


「ぐぅぅ……っ! 知ってはいたけど、改めて見ても本当にあいつら全員何なのよ!? 胸ってあんなに揺れたり浮いたりするものなの!?」


「お、落ち着いて、ピーウィー! 気持ちはわかるけど、本当に落ち着こう!!」


 脱衣場からこそこそと露天風呂内の様子を窺っている女子二人が、怒りやら絶望やらの感情を入り混じらせながらそう呻く。

 少し前に退学処分を言い渡され、今は何をしているのか全くわからないシアンのパーティに属していたピーウィーとネリエスは、世の不条理と圧倒的貧富の格差を目の当たりにして、色々と形容し難い反応を見せていた。


「これで二度目だけど、どうしてああもデカいのが揃ってるわけ!? 完全にユーゴの趣味よね? あいつ、絶対に巨乳好きよね!?」


「い、色々と思うところはあるだろうけど、ユーゴさんは私の恩人だし、あんまり責めたりしないであげて~……!」


 『最低でも巨、普通に爆がいる』というユーゴの周囲の女性陣の見事なお山っぷりに脱衣場の壁を叩いて悔しがるピーウィー。

 どことは言わないが、とても美しい平坦を描いている体の一部を持つ彼女は、同じく綺麗な断崖絶壁っぷりを見せる親友からの言葉に顔を上げたのだが、そこにまた新たな山脈が姿を現してしまった。


「おお~っ! これが露天風呂なんだね~! でっかいお風呂にみんなで入るの、楽しそう!!」


「ぐおお……っ!?」


 日に焼けた小麦色の肌を惜しげもなく曝け出しながら、楽し気に叫ぶ少女が一人。

 彼女が露天風呂を見回すようにしながら前傾姿勢を取れば、メルトたちにも見劣りしない褐色の山脈がぷるんっ、と柔らかな揺れを見せる。


 太陽のような溌溂とした笑顔を見せる、色々な意味でオープンなその少女は、このウインドアイランドで出会った魔物使いのエレナだ。

 ピーウィーたちと同様にメルトたちに頼まれてこの作戦に囮として参加することになった彼女ではあるが、それを抜きにして同年代の友人たちとの入浴に色んな意味で胸を弾ませている。


「あっ! あなたたち、マルコスやユーゴの友達なんだよね? お友達のお友達はまた友達ってことで、よろしく~!!」


「ぐふぅっ……! こ、こいつもデカい……っ!!」


「え? 身長、同じくらいじゃない? そんなに大きくなんかないよ~!」


 そうじゃねえ! と心の中でピーウィーが笑顔のエレナへとツッコむ。

 この邪気を感じさせない天然の少女は、ユーゴとすぐ仲良くなったことからも考えると本当にいい子なのだろうが……それはそれとして自分のコンプレックスを刺激する存在でもあった。


 というより、修学旅行中にまた女をひっかけるってどういうことだ? 元から女好きなのは知っていたが、信じられないタイミングでまたタイプの違う美少女をお友達にしているユーゴにも、色々とツッコんでやりたい。

 っていうかまた巨乳だし、ユーゴの趣味が透けて見えるな……と膝をついたピーウィーが考える中、楽しそうに体を揺らしていたエレナが言う。


「よ~し! それじゃあ、みんなでお風呂にダイブだ~っ! いっくぞ~っ!!」


「あ、ストップです。露天風呂で走ると危ないですよ、エレナさん」


「ひょえっ!?」


 思い切り露天風呂へと突入しようとしたエレナを、背後からミザリーが冷静に止める。

 突然の制止に驚いたエレナであったが、それでも笑みを崩さずにミザリーへと話しかけた。


「びっくりした~! でも、そうなんだね! 教えてくれてありがとう!」


「わかってくださったのならそれでOKです。では、お淑やかにお風呂に入ることにしましょう。ネリエスさんとピーウィーさんも、裸のままそうしていたら風邪を引きますよ?」


「うぐっ……! わ、わかってるわよ……!!」


「ま、まあ、お友達とお風呂に入るだけだし、緊張する必要なんてない、よね……?」


 自分に言い聞かせるようにそう呟いたネリエスの言葉が合図だったかのように、四人もまた先に入っていた面々に続いて露天風呂へと足を踏み入れた。

 きゃっきゃと騒いでいたメルトたちも新たなメンバーの登場を喜び、彼女たちを迎え入れる。


「あっ、ミザリーたちも来た~! もう、遅いよ~!」


「すみません。何故だかピーウィーさんたちが入るのを躊躇っていたので……」


「ちょっ、ミザリー!? 余計なこと言わないでいいから!」


「う~む、こうやって見るとあれだな。後衛担当の連中は線が細くて女の子らしい体付きをしてて、ちょっと羨ましいね」


「拙者たちは腕とかに筋肉が付いてしまうでござるからな~……まあ、そういうところも魅力の一つだとは思っているでござるがね!」


「でも、私はそういう逞しい女性に憧れちゃいます。見ての通り、体が小さいので……」


「私もその気持ちはわかります。大きい人が羨ましいですよね」


「ライハ、あなたの場合は小さいけど大きいと思うわよ? 下手するとそれ、皮肉っぽく聞こえるから止めときなさい」


「いいねいいね~! みんなでお風呂、楽しいね~! いっぱいいっぱい話そうよ~! 私、みんなのこととかユーゴやマルコスたちのことももっと知りたいしさ!」


 元気っ子からクール系、スタイルも身長も雰囲気も様々な美少女たちが全裸できゃいきゃいと騒ぐ。

 一応、これは囮作戦でもあるし、そのためにわざと騒いでいる部分もあるのだが……何もかもが演技というわけでもない。


 そんなふうに、メルトたちが修学旅行の一時を友人たちと楽しく過ごす中、警備を担当しているユーゴたちはそれぞれが担当するポイントで身を隠しながら、通信機を使って会話をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る