あ、サービス回です
覗きが出現した翌日、犯人を確保するための作戦がついに決行された。
ホテル側と協力して全ての罠を仕掛け、同時にそれとなく大浴場の捜査と監視を行う。
覗き魔を牽制しつつ、誘導しつつ、最終的な捕らえ方に関しても詰めていく中で、時間はあっという間に過ぎていった。
時刻は夕方。決戦が始まろうとしている頃、女性用の露天風呂には緊張感とは真逆の雰囲気が満ちていた。
ガラリ、と音を響かせながら開いた扉の先から、体にタオルを巻いた女子たちが次々と姿を現し、呑気な様子を見せ始める。
「うっわ~っ! 広い! 綺麗!!」
「そうだね。まあ、景色を楽しむような場所じゃないのが残念ではあるけどね」
一番最初に露天風呂に足を踏み入れたのは、メルトとアンヘルの二人だ。
目立つ髪色をしている彼女たちだが、それ以上にそのナイスバディっぷりが目立っている。
普通に入浴しようとしている雰囲気を醸し出しながら二人が露天風呂を見回す中、その後ろからヤマトの戦巫女三人組がやって来た。
「露天風呂! ヤマトを思い出すでござるな!」
「広さはまずまずね。十分にくつろげそうだわ」
「ワ、ワ~、ジッカヲオモイダスナ~……!!」
何も考えてない様子のサクラと普段通りの冷静さで演技をするセツナに、一人だけガチガチのライハ。
三者三様の反応を見せている戦巫女たちだが、全員が見目麗しい美少女だという部分だけは共通している。
湯気に体を巻かれながら、覗き穴の位置を確認しながら、彼女たちは上手いこと囮になるために素肌を曝し、くつろぐ演技をしていく。
「あぁ~……っ! 疲れた体にこの温かさが染みるねぇ……!」
「アン殿、老けるには早いでござるよ……と言いたいところでござるが、その気持ちはよくわかるでござる……!!」
「ふ、二人とも、先に体とかを洗った方がいいと思うよ……?」
乳白色の露天風呂の中に肩まで浸かり、恍惚とした表情を浮かべながら深いため息を吐くアンヘルとサクラ。
その傍らで少しだけ素に戻ったライハが掛け湯をしながら二人へと忠告する中、少し離れた場所ではメルトとセツナがこんなやり取りを繰り広げていた。
「メルトって、綺麗な肌してるわよね……スタイルもいいし、嫉妬しちゃうわ」
「そう言うセツナこそ、名家のお嬢様って感じで真っ白な肌してるじゃん! いつもは隠してるけど、胸も大きいしさ~!」
「ふふふ……! ありがとう。じゃあ折角の機会だし、お互いに体の洗いっこでもしましょうか?」
「さんせ~い! ふふふ、女の子同士の友情を深め合っちゃいましょう!!」
そう話しつつ、泡立てたタオルを手にお互いの体を洗い合う二人。
きゃっきゃという何とも楽し気な声と妄想を掻き立てる百合百合しい会話に紛れて、湯船で体を温めるアンヘルたちの声も聞こえてくる。
「う~ん、風呂はくつろげるのはいいんだが、油断してると胸が浮いちまうのがどうしてもねえ……」
「わかるでござる。色々解放されてくつろげるのは最高でござるが、ここだけはサラシを巻きたい気分でござるな」
「今日はまだいいけど、人が多いとジロジロ見られたりもするしね……」
特定の部位が大きい女性だからこその悩みを、それなりに大きな声で話す三人。
何がとは言わないが、親密な雰囲気で体を洗い合っている二人を含めれば、巨・爆・巨・爆・巨……というサイズ感を誇る彼女たちの入浴は、間違いなく絶景以外の何物でもないだろう。
ただ、こうしてやや恥ずかしめの会話をしているのは、完全に気を抜いてくつろいでいるからではない。
今もどこかで覗きをしようとチャンスを窺っているクリアプレート所有者の興味を引き、(ちょっと違う意味で)挑発するためだ。
今回の作戦にあたって、自ら囮になると立候補した彼女たちは、できる限り犯人の隙を作り出すべく演技をしている。
下心に溺れた覗き魔が鼻の下を長くしながら覗き穴に顔を近付ければ、相手を追跡するための罠が発動してくれるはずだ。
そうなれば、あとはユーゴや警備隊の面々がどうにかしてくれる。
今回の覗き事件がより大きな犯罪に化ける前に犯人を確保しようと動いている男性陣を信じているからこそ、彼女たちは文字通り恥を忍んで身を削るこの役目を全うすべく、全力を注いでいた。
そして、そんな彼女たちやユーゴに協力すべく、他にも数名の女子たちがこの作戦に参加してくれている。
――の、だが……その女子たちの中には目の前の光景に絶望し、なかなか露天風呂へと足を踏み出す勇気を持てなくなっている者もいるようで……?
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