悪夢再び
「柵を破壊しろ! 燃やせ!! 魔物たちを解放しろ!!」
「自由と正義の名の下に、青く広い海を取り戻すのよ!!」
「止めろ! 止めてくれ! どうしてこんなことをするんだ!?」
それぞれが武器と手に、魔物たちを囲っている柵や住処となっている小屋を破壊して回る人々。
時に手製の火炎瓶を放り投げ、邪魔な障害物や木々を燃やしているブルー・エヴァーの構成員たちへと、シャンディア島の住民が叫ぶ。
必死になって彼らを止めようとする人々であったが、武装している上に狂乱状態になっているブルー・エヴァーの人間たちは、そんな彼らの言葉に耳を貸すどころか積極的に排除しようと動いていた。
武器を振るい、人々を襲う狂った人間の姿を目の当たりにしたエレナが愕然とする中、その硬直から立ち直ったマルコスがホーロンを襲う構成員を体当たりで吹き飛ばす。
「大丈夫ですか!? しっかり!!」
「君は……! ああ、助かったよ。本当にありがとう」
「いったい何があったんです!? どうしてこんなことに……!?」
「わからない。急にこいつらが乗り込んできて、小屋や柵を壊し始めたんだ」
軽い傷を負っているホーロンの言葉を聞いたマルコスが、振り返ると共に暴れ回るブルー・エヴァーの構成員を睨む。
この集団のリーダーと思わしき指示を出している男の姿を見て取ったマルコスは、そのまま勢いよく彼に突進していった。
「んっ!? 貴様は昼間に我々の邪魔をした学生たちの……!」
「こいつをひっ捕らえろ! 世間知らずのガキに我々の正義を叩き込んでやるんだ!」
「下郎が……!! そこを退けっ!!」
手斧や短剣を手に、自分へと襲い掛かってくるブルー・エヴァーの構成員たちを一瞥したマルコスが吐き捨てるように言う。
頭上から思い切り手斧を振りかぶった男の顎を殴りつける一発で失神させ、ナイフを構えて突進してきた男の腕を取り、関節技を極めてやれば、あっという間に暴漢たちは大人しくなった。
「ぽぺっ……!?」
「うっ、腕がああああっ! 俺の、腕がぁああああああっ!?」
「貴様ら、いい加減にしろ! こんな馬鹿な真似はすぐに止めるんだ!!」
「馬鹿な真似だと? お前のような子供にはわからんだろうが、我々には使命がある! この島の自然を守るという、崇高な使命がな!」
「木々を燃やし、魔物たちを危機に陥れておいて、よくもそんなことが言えたな! この行いのどこに自然を守る理念が表れているというんだ!?」
リーダーと思わしき男の胸倉を掴み、怒りをぶつけるマルコス。
自然を守るどころか、何もかもを破壊する勢いの暴動を起こすブルー・エヴァーの行いを非難する彼であったが、構成員たちはそんなマルコスを煽るように暴走を続けてみせる。
「コラッ! リーダーから手を放せ!!」
「さもないと……こうなるわよ!!」
「!?!?!?」
マルコスへとそう叫んだ銀髪の男と、赤髪の女が手にしていた火炎瓶を近くの小屋に向かって放り投げた。
木製の家に火が灯り、段々と激しく燃え上がり始める中、小屋の中から聞こえてきた魔物たちの悲鳴を耳にしたマルコスが拳を握り締めながら唸る。
「この……外道共がっ!!」
燃え盛る炎よりも強く揺らめく怒りの炎を心の中に燃やしながらも、小屋の中に取り残された魔物たちを救うことを優先したマルコスが掴んでいたリーダーの胸倉を離す。
そのまま、燃え上がる小屋の中に突っ込んでいった彼の背中を見つめながら、服を直したリーダーが自分を助けてくれた二人へと言う。
「助かったよ。ゲラスくんにレイカくん、君たちは本当に頼りになる同志だ!」
「ありがとうございます! 僕たちもお役に立てて嬉しいです!」
「ブルー・エヴァーの正義を世界に知らしめましょう!!」
ビシッ、と笑顔を浮かべながら機敏な動きで敬礼をした男女へと、大きく頷くリーダー。
彼らがそんなやり取りを行う中、燃える小屋から魔物たちを連れて脱出したマルコスが、エレナたちへと言う。
「エレナ! 火に弱い魔物たちはどこだ!? 優先して救助するから、教えてくれ!」
「ここにはあんまり……! でも、他の場所にいる子たちが……!!」
「大丈夫だ! ユーゴやリュウガたちがいる! 他の場所はあいつらがいれば心配ない! 私たちはここの魔物と人々を助けて、安全な場所まで連れていくぞ!!」
「わ、わかった!!」
「カニニ~ッ!!」
目の前の光景と現実を受け入れられず、茫然としていたエレナであったが、マルコスの指示を受けてどうにか意識を持ち直したようだ。
ブルー・エヴァーの攻撃を受けて傷付いた人々に手を貸し、逃げ惑う魔物たちを保護して、どうにかこの場を離脱すべく必死に動き始める。
「逃がすな! 魔物たちを確保しろ!!」
「この……っ! どこまでふざけた真似をすれば気が済むんだ、お前たちは!?」
炎に巻かれていた魔物たちとを救出し、共に逃げようとするシャンディアの人々にブルー・エヴァーの魔の手が迫る。
武器を手に島民を襲い、火炎瓶を投げて逃げ道を炎で封鎖する彼らの暴挙に怒りを募らせるマルコスは、襲い来る彼らからエレナたちを守るように戦い続けていた。
剣を振り回す男の前に立ち、ギガシザースを召喚。突如出現した黄金の壁にぶち当たったその男はあっさりと意識を失って崩れ落ちる。
続けて、飛んでくる火炎瓶をシールドバッシュ気味に弾き返し、相手の気勢を挫いたマルコスは、振り向くと共にエレナたちへと声をかけた。
「今の内だ! 早く逃げろ!!」
「カーニーッッ!!」
追手の相手を一手に引き受け、決死の防戦を繰り広げるマルコスに応えるように、ポルルが口から吐く泡で進路を塞ぐ炎を消火していく。
エレナやホーロンもまた懸命に消火活動を行う中、緊迫した雰囲気に相応しくない、どこか嬉しさをにじませた声が響いた。
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近況ノートに投稿したホラー小説の感想&意見募集にご協力いただき、ありがとうございました!
より良い作品を作れるよう、皆様の意見を参考にして頑張っていきます!
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