やっぱり何も知らないユーゴさん(15歳)

「つ、疲れた……! ああいう話題になった時の正しい対処法、勉強しておこう……」


 ルミナス学園に戻り、女子寮に向かうメルトたちと別れたユーゴは、一人きりになったタイミングでぼやいていた。


 女子たちの気持ちというか、どういった思惑があるかは理解してはいるが、あの状況で自分はどうすればよかったんだと、答えの出ない疑問に頭を悩ませている。

 ちょっとばかし強引だったとは思うが、あのカオスを収束するために一生懸命頑張った自分に対して、あの態度は理不尽じゃないか……? と彼が考えていると、またしても向かいの道から見知った顔ぶれが歩いてきた。


「おっ、マルコスじゃん! 今日も訓練してたのか? 精が出るなぁ~!」


 部下たちを連れ、寮へと戻る最中であろうマルコスの姿を見かけたユーゴが彼へと手を振る。

 こんな時間まで訓練を行う努力家な友人を賞賛したユーゴであったが、マルコスの反応は少し変で……?


「ふふふっ、ユーゴか……! ここで出会うとは、やはり我々はそういった星の下に生まれているようだな……!!」


「は?」


 不敵に笑い、妙なことを言い出したマルコスの様子に再び首を傾げるユーゴ。

 なんだか今日は友達が変な態度を見せる日だなと思う彼に向け、ビシッと人差し指を突き付けてきたマルコスが堂々とした態度で叫ぶようにして言ってきた。


「我が永遠のライバル、ユーゴ! 喜べ! 私は更なる高みに昇り詰める段階まで到達した! じきに貴様に後れを取ることもなくなるだろう!!」


「あ、そ、そうか。そりゃあ良かった、な……?」


「ふはははははは! 屈辱を糧に生まれ変わり、改修したギガシザースを使いこなせるようになった私は、ネオ・マルコスと化した! 今、そこから更に進化を果たそうとしている! いうなれば、そう……ネオ・マルコス・スーパーだ!!」


「……前々から思ってたけど、お前ってもしかしてネーミングセンスねえんじゃねえのか?」


 そんなどこぞの「私は神だ!」していた人物(ウィルスかもしれない)のように名前をころころ変えるなと心の中でツッコミを入れるユーゴ。

 最終的に『ネオ・マルコス・ボルグ・スーパーゴッド』みたいな名前になった末に残りライフをゼロにしちゃって普通のマルコス・ボルグに戻ってから消滅したりしたらどうしようとかあり得ないことを考える彼へと、多少落ち着いたマルコスが言う。


「見ていろ、ユーゴ! 私は強くなる! お前と肩を並べられるほどにな!! これまでの弱く情けない自分と別れを告げ、自らの殻を破り、その先の領域へと足を勧めるのだ!! その時を楽しみにしていろ、我が永遠の好敵手よ!!」


「おう……? 楽しみにしてるよ」


「はっはっは! は~っはっは!! 私はまだまだ強くなれる! 強くなってみせるぞ!! ふはははははは! ははははははははっ!!」


「……なに言ってんだろうな、あいつ……?」


 部下たちを引き連れ、高笑いしながらのっしのっしと寮へと帰っていくマルコスの背中を見つめながら、怪訝な表情で呟くユーゴ。

 変な態度だと思ったりもしたが、ある意味ではあれがマルコスの平常運転だったかもしれないなと考えながら、彼もまた第五寮へと帰っていくのであった。




―――――――――――――――



「って、ことがあってよ。なんか変だろ?」


「ははは。確かにね。きっとみんな、修学旅行を目前にして浮足立ってるんだろうさ」


「う~ん……マルコスの場合は修学旅行関係なかったような気がするんだが……?」


 そうして、夜。自室でユーゴから今日あったことを報告されたリュウガは、曖昧な笑みを浮かべながら彼に返事をしていた。


 ちなみに自身がマルコスに気付きを与え、成長を促したことを……彼の変な態度の原因が自分にあることをユーゴには話していない。

 マルコス的には自分の口から話したいだろうし、わざわざネタバラシをする必要もないと考えたからだ。


 そういう隠し事をしているリュウガではあるが、ユーゴもまたライハの水着関連のことを彼に伝えていないからお相子といったところだろう。

 怪訝な表情を浮かべるユーゴは、首を捻りながら独り言のようにぼやく。


「なに言ってるんだろうな、マルコスの奴。弱くて情けない自分と別れて強くなるって、あいつはもう十分強いし、安心して背中を預けられる奴だっていうのにさ」


「ふふっ……! そうだね、卑屈が過ぎるよね。もう少し、自信を持っていいと思うんだけどな……」


 助言はしたが、人はそう簡単に変わるものではない。

 まだマルコスの自分を卑下する癖は抜け切らないかと思いながら、ユーゴもまた自分と同じ意見であったことを喜ぶリュウガが彼に同意する。


 色々と考えていたユーゴもまた、少しすれば仲間たちもいつも通りに戻るだろうと結論付け、考えることを止めたようだ。

 ごろりとベッドに寝転がり、相棒へと問いかける。


「まあ、確かに修学旅行は楽しみだよな! お前もそうだろ、リュウガ?」


「まあね。気の合う友人と遠出するんだ、心も踊るよ」


「だよなぁ!? 心が躍るなぁ……!!」


 なんだかちょっとネオ・マルコス・スーパー的な人と関わりがありそうな人物(ウイルスだと思う)のような雰囲気でリュウガに同意したユーゴが笑顔を浮かべる。

 天井を見上げながら、目前に迫った修学旅行への期待に胸を膨らませながら、彼は楽し気に呟くのであった。


「楽しみだな、修学旅行……!! どんな旅行になるか、楽しみだ!」


―――――――――――――――

あと二視点でお話を書いて、この短編もお終いです!

微妙に短いかもしれませんが、許してください!!


(高校一年生って15歳でしたよね……?)

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