ガールズ・トーク(男子たちへの愚痴ともいう)
「改めて思うんだけどさ、うちの男子組って色々と鈍過ぎない? こっちがアプローチ仕掛けてたりするんだからさ、もっとこう、あるじゃん!!」
「まあ、そうかもな。でも、今回はあいつらが鈍いお陰で助かってる部分もあるし、そこら辺は考えようじゃないか?」
「戦いの時は勘が良いのに、平時は全くというのはそれはそれであれがあっていいでござるな! ギャ、ギャ……あれ?」
「ギャップ、でしょう?」
「そうそう! それでござる!!」
場所を変えて、エーンたちが働いている店にて、女子会が開催されていた。
テーマは恋愛トーク……と見せかけて、男性たちへの愚痴である。
話の中心になるであろうライハがもじもじとする中、そんな彼女へとユイが声をかけた。
「ライハさんが気にしていることですけど、大丈夫だと思いますよ。お兄様、そういう部分に関しては本当に鈍いですし、それに――」
「そうそう! 言っちゃ悪いけど、ユーゴもマルコスもリュウガも、女の子の気持ちに疎いタイプの男子たちだしね!」
「超絶鈍感野郎のユーゴにデリカシーが足りないマルコス、そもそもそういうことに気を払うつもりのないリュウガか……三者三様の鈍さだな」
「三人とも、仲良しでいいことでござるな!!」
ユイの話に乗っかるように被せたメルトたちの言葉に、申し訳ないと思いながらちょっと同意してしまうライハ。
同時に、女子たちの頭の中では男子三人組が「俺たちにぶちんブラザーズ! 女の子の気持ちとかよくわかんない!」と肩を組みながらスキップしている姿が想像できてしまい、その光景のおかしさに全員が揃って噴き出してしまう。
「だから、ライハがリュウガに想いを寄せてることなんて気付いてないわよ。本当、あの鈍さに感謝ね」
「想いを寄せてるとか、そういうんじゃあ……」
「いい加減、諦めなさいよ。鈍い男子たちはともかく、女子たちにはバレバレなんだから」
「うっ……!」
セツナの鋭い指摘に声を詰まらせるライハ。
このまま話を続けるのは彼女の心境的に良くないかと考えたメルトは、敢えて話題を変えることでライハを落ち着かせる時間を作ることにした。
「それにしてもさ、やっぱりリュウガの加入は大きいよね~……! ユーゴと二人で戦う姿を見てると、色々と思うことがあるもの」
「ほう? ちなみにメルトは何を思ったりしてるんだ?」
「う~ん……嫉妬、かなぁ? 前々から思ってたけど、私って回復とか後方からの援護とかの仕事を任されることが多くなって、一緒に戦ってる感が薄れてるような気がするんだよね。最初にユーゴと組んだのも、相棒になったのも、私なのにさ~……! ポジションを奪われたみたいで悔しいんですけど!」
「メルトはできることが沢山あるし、ユーゴから頼られてるでしょう? 新参者で援護射撃しかできない私は、視線の先に見えるユーゴとの距離が、そのまま心の距離に思えちゃって、結構つらいわよ」
「前線で肩を並べる拙者にも思うところはあるでござるよ? 拙者の実力はリュウガ殿に遠く及びませぬし、守りに関しては一流の腕前を持つマルコス殿もいる。立つ瀬がないというか、立ち位置が見えないでござるよ~……!」
「あのなあ、お前たちはそうやって戦えるけど、アタシはそれも難しいんだぞ? こっちの専門は技術系で、戦いの実力はお前らより一歩も二歩も劣ってるんだからな?」
「むしろアンは唯一無二のポジションを確保してるじゃん!! 羨ましいよ! ずるいよ!!」
「……アタシからすれば、お前らの方が羨ましいよ。少し立場は違うけど、フィーの気持ちがわかる。ユーゴの奴が無茶をする度に、もっと強ければ、あいつに危険なことをさせないで済む。もっと技師としての腕があれば、ブラスタに安全な改造ができるんじゃないか……って自分の無力さが嫌になるからさ」
「……皆さん、色々と悩んでいるんですね。魂の揺らぎがほとんどないから、わかりませんでした」
「そりゃあ、ねえ。ユーゴの前でうじうじ悩んだりなんかできないしさ。それに……私たち以上に嫉妬したり、悩んでる奴がいるからね」
強くて格好いい女性たちだと思っていたメルトたちにも、悩みはある。
恋の悩みもそうだが、魔導騎士らしく自分自身の実力に関しても思うところがあるということを知って驚いたユイは、続けて投げかけられたメルトの言葉を受け、彼女が誰のことを言っているのかを理解した。
「あいつもあいつでずるいんだよ~! 本人が気付いてないだけで滅茶苦茶強いし頼りになるってのに、そんなに悩まないでよね~!」
「比較対象が悪いだけなのだから、もっと自信を持ってほしいでござるよ。まあ、強くなりたいと願う気持ちは拙者たちだって負けてないですがね!」
「名前を出して気付いたけど、フィーの存在がデカ過ぎる! ユーゴにとって大切なものランキング、不動の一位じゃないか!」
「確かに……まあ、家族なんだから当たり前ともいえるし、そのハードルを超えることで家族になれるって考えれば納得の高さだし……」
「……もしかしてなんだけど、むしろ男子たちが私たちの最大の恋敵だったりする?」
頼りになる相棒と、後ろから必死に追いかけてくるライバルと、かわいいかわいい弟。改めて考えてみると、男子たちが強過ぎる。
どうやってあの輪の中に入り込み、ポジションを確保すればいいんだと……難易度の高さを再認識して頭を抱えるメルトたちへと、ユイが言う。
「恋の悩みは、かくも大変なものなんですね……周りは恋敵だらけですし、相談もできないから大変そうです」
「そうなの! そして、そんな時に頼ってるのがライハなんだよ!」
「ライハはユーゴ狙いじゃあないからね。口も堅いし、安心して相談できるのよ」
「あっ、えっ……?」
ここでいきなり名前を出されるのかと、予想外のタイミングで話に加わることになったライハが驚きながら顔を上げる。
そんな彼女を見つめながら、友人たちは笑顔でこう続けた。
「だから、今日くらいはライハの相談に乗ってやらないとな。普段の恩返しってやつだ」
「相談できずとも、抱えているものを吐き出すだけで楽になるでござるよ!」
「話してみて。少しくらい、あなたの力になりたいのよ」
そう、ライハへと話を促す面々に続きメルトが口を開く。
どう話すのがベストなのかはわからないが……想いを込めればきっとわかってくれるだろうと思いながら、彼女はライハへと言った。
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